不眠症

不眠症とは

不眠症とは、夜に十分眠ろうとしても寝付けなかったり、途中で目が覚めてしまったりして、睡眠が不足・乱れてしまう状態です。単なる寝不足と違い、不眠症では「眠りたいのに眠れない」状態が続き、日中の生活に支障が出ます。例えば寝つきに時間がかかる、夜中に何度も目が覚める朝早く目が覚めてしまう眠りが浅く疲れが取れないといったタイプがあります。不眠症は「国民病」と呼ばれるほど一般的で、日本人の3~4割が何らかの不眠に悩んでいると言われます。誰でも緊張や心配で一時的に眠れないことはありますが、それが週3回以上・3ヶ月以上続く場合は不眠症として治療が必要です。

不眠症の原因

不眠症の原因は一つではなく、さまざまな要因が絡み合います。主な原因には次のようなものがあります。

  • ストレスや環境の変化: 仕事や人間関係、育児などによる精神的ストレス、気温や生活リズムの変化などが睡眠に影響します。真面目で神経質な性格の方はストレスを溜め込みやすく、不眠につながりやすい傾向があります。
  • 不規則な生活習慣: 夜更かしや昼夜逆転の生活、夜勤などにより体内時計が乱れると、眠りたい時間にうまく眠れなくなります。
  • 心や体の病気: うつ病や不安障害など心の不調、痛みや頻尿など体の病気が原因で眠れないこともあります。ほかの睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など)が隠れていないか確認も必要です。
  • 薬や刺激物の影響: カフェイン(コーヒー・お茶)やアルコール、ニコチンは睡眠を浅くします。薬の副作用で眠れなくなることもあります。

このように様々な要因で脳が覚醒する力が高まり、眠りに入る力より勝ってしまうと不眠が起こると考えられています​。

不眠症の症状

不眠症の症状は、「夜間の睡眠の問題」と「日中の不調」に分けられます。

  • 夜間の症状:
    • 入眠困難: 布団に入っても30分以上眠れない。頭がさえて眠れず、焦りを感じます。
    • 中途覚醒: 夜中に何度も目が覚め、その後なかなか再入眠できません。
    • 早朝覚醒: 朝予定よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、その後眠れない。
    • 熟眠障害: 時間は寝ているのに眠りが浅く、睡眠の質が悪いためぐっすり寝た感じがしない
  • 日中の症状:
    • 倦怠感・疲労感: 十分眠れないことで日中に強いだるさや疲れを感じます。
    • 意欲低下・集中力低下: やる気が出ず仕事や勉強に集中できません。
    • 気分の不調: イライラしやすくなったり、不安感や落ち込みが現れることもあります。
    • 身体の不調: 頭重感、めまい、食欲低下など体にもさまざまな不調が現れます。

これらの症状により生活の質が低下し、「夜眠れない」+「日中つらい症状」の両方が揃ったとき不眠症と診断されます。

不眠症の診断方法

まず患者さんの眠れない状況について詳しく問診します。「いつ頃から眠れないか」「就寝・起床時刻」「夜中に目覚める頻度」「生活習慣やストレス状況」などを聞き、不眠のタイプや原因を探ります。また日中の眠気や体調も確認し、睡眠不足の影響を評価します。

必要に応じて以下のような検査・確認が行われます。

  • 睡眠日誌の記録: 就寝・起床や目覚めた時間、眠気を感じた時間などを記録してもらい、睡眠パターンを把握します。
  • 他の疾患の除外: 不眠の背景に身体疾患がないか確認します。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などホルモン異常や、喘息・痛みなど身体の病気が眠りを妨げていないか、必要に応じ血液検査画像検査を行います​。
  • 服用薬・嗜好品の確認: 睡眠に影響する薬剤や、カフェイン・アルコールの習慣について問診します。
  • 睡眠障害の検査: 症状によっては他の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)を調べる検査を行うこともあります。例えば強いいびきや日中の極端な眠気があれば、一晩入院して睡眠中の呼吸や脳波を測定する検査(ポリソムノグラフィ)を行う場合もあります。当院では、「ポリソムノグラフィー」は行っておりませんが、 必要な場合は、睡眠専門の医療機関をご紹介いたします。

不眠症自体を明確に示す血液検査や画像検査は無いため、問診による判断が中心です​。医師は問診と必要な検査結果を総合し、他の原因が無いことを確認して不眠症と診断します。

不眠症の治療方法

不眠症の治療は生活習慣の改善薬物療法を組み合わせて行います。症状や原因に応じて適切な方法を選択し、根気強く治療していきます。

  • 生活習慣の改善(睡眠衛生指導): まずは眠りやすい生活リズムを整えます。具体的には以下を実践します。
    • 規則正しい睡眠時間: 平日も休日も毎日なるべく同じ時刻に寝起きする。
    • 寝る前のリラックス: 就寝前のスマホ・PC使用を控え、明るい光や刺激を避けます。軽いストレッチや入浴で体温を上げ、寝る頃に下がるようにすると眠りやすくなります。
    • カフェイン・アルコールを控える: 特に午後以降のコーヒーやお茶は避け、寝酒もかえって眠りを浅くするので控えます。
    • 環境調整: 静かで暗い寝室、ちょうど良い温度・湿度を保ちます。寝具も快適なものを選びましょう。
  • 薬物療法: 症状がつらい場合、睡眠薬の助けを借ります。現在の睡眠薬は適切に使えば安全性は高く、依存のリスクも管理可能です。主に以下の薬が使われます。
    • 睡眠薬(睡眠導入剤): 寝つきを良くする短時間型、夜中の目覚めを抑える中時間型など不眠タイプに合わせ処方されます。
    • 抗不安薬: 不安や緊張が強い場合、気持ちを和らげる薬を就寝前に用いることもあります。
    • 抗うつ薬・漢方薬: 体質や状態によって、抗うつ薬の少量投与が不眠に有効な場合や、漢方薬(抑肝散など)が用いられることもあります。
  • 認知行動療法(CBT-I): 薬を使わない治療法として、不眠症に特化した認知行動療法があります。不眠につながる考え方の癖(「眠れないと明日に支障が出る」と焦る等)を修正し、眠れないときは一度ベッドを出てリラックスするなどの行動療法を指導します。専門の心理士による数か月のプログラムで、不眠の改善を図ります。当院では、認知行動療法(CBT‑I)のプログラムは実施しておりません。CBT‑Iが必要な場合は、当院での問診結果を踏まえて、専門機関へのご紹介を検討いたします。
  • 治療期間の目安: 不眠症が慢性化している場合、治療には時間がかかります。改善がみられてもすぐに治療を中断せず、医師と相談しながら徐々に減薬します。一般に、十分改善するまで少なくとも3ヶ月程度は継続治療し、その後も再発予防のためしばらく生活習慣の見直しや薬の調整を続けます​。睡眠習慣が整えば薬を減らしていくことも可能です。

上記のような生活指導を丁寧に行い、必要に応じて薬を処方します。睡眠薬に抵抗がある方にも、少量から開始し副作用に注意しながら安全に使っていきます。眠りの問題は改善に時間がかかることもありますが、焦らず医師と二人三脚で取り組みましょう。

Q&A(よくある質問)

Q1. 睡眠薬には依存性や副作用がありますか?
A1. 現在使われる睡眠薬は適切に使えば安全です。一部の昔の睡眠薬では依存が問題になりましたが、今主流の薬は依存や副作用が少なくなるよう改良されています。それでも長期連用は避けた方が良いため、医師が様子を見ながら減量・中止を検討します。副作用として翌朝の眠気やふらつきが出ることがありますが、薬の種類や量を調整して対処します。勝手に量を増減せず、医師の指示通りに服用すれば大きな心配はいりません。

Q2. どのくらいで不眠症は良くなりますか?
A2.
個人差はありますが、生活習慣の改善を始めて数週間で眠りのリズムが整い始める方が多いです。薬を使った場合、薬に体が慣れる1~2週間で効果を実感し、その後徐々に睡眠が安定していきます。ただし慢性的な不眠の場合、完全に安定するまで3ヶ月以上かかることもあります​。良くなってもしばらくは治療を続け、再発を防ぐことが大切です。焦らずに少しずつ眠れる夜を増やしていきましょう。

Q3. 寝酒や市販の睡眠改善薬で代用できますか?
A3.
寝酒(アルコール)は一時的に眠気を誘いますが、睡眠の質を悪くし夜中に目覚めやすくなります。また量が次第に増えるリスクもあるため不眠の対策にはおすすめできません。市販の睡眠改善薬(いわゆるドリエルなど)は抗ヒスタミン剤で、一時的な不眠には効くこともありますが、根本的な解決にはなりません。眠気が翌日に残ることもあります。不眠症が続く場合は自己判断に頼らず、専門医に相談して適切な治療を受ける方が安心です。

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