睡眠中に歯ぎしりをする
こんなお悩みはありませんか?
- 「朝起きると顎が疲れていたり、痛みを感じたりする」
- 「パートナーから『夜中に歯ぎしりの音がうるさい』と指摘される」
- 「歯科医院で歯の摩耗が進んでいると言われた」
- 「朝起きると頭痛や首の痛みがある」
- 「歯ぎしりによって歯が欠けたり、詰め物が取れたりした」
- 「顎関節の音(カクカク音)や開けにくさを感じる」
これらの症状は、「睡眠時ブラキシズム(睡眠中の歯ぎしり)」の可能性があります。多くの方は自分が歯ぎしりをしていることに気づかず、家族からの指摘や歯科医院での診察時に初めて知ることも少なくありません。放置すると、歯の損傷だけでなく、顎関節症や頭痛、睡眠の質の低下などにつながることがあります。
睡眠時ブラキシズムとは
睡眠時ブラキシズムは、睡眠中に無意識に歯をすり合わせたり、食いしばったりする状態を指します。医学的には睡眠関連運動障害の一種として分類されています。以下のような特徴があります:
- 種類:
- 相動性(リズミカル):歯をリズミカルにこすり合わせる典型的な歯ぎしり
- 緊張性(持続的):歯を強く食いしばる状態
- 発生タイミング:
- 主にノンレム睡眠(特に浅い睡眠)の段階で発生
- レム睡眠中に起こることもある
- 頻度:
- 成人の約10%、小児の約15%に見られる
- 年齢とともに発生率は低下する傾向
- 持続時間:
- 一回のエピソードは数秒~数分間
- 夜間に複数回発生することが多い
睡眠時ブラキシズムの主な原因
1. 心理的要因
- ストレスや不安:日中のストレスが睡眠中に筋肉の緊張として現れる
- 性格特性:完璧主義、競争心が強い、几帳面など特定の性格傾向との関連性
- 情動的ストレス:仕事や家庭での緊張、悩み事
2. 身体的要因
- 歯の咬み合わせ(噛み合わせ)の問題:歯列不正や噛み合わせの不具合
- 神経学的要因:脳内の神経伝達物質の調節異常
- 遺伝的要因:家族内での発症傾向
3. 生活習慣関連
- 喫煙:喫煙者は非喫煙者と比較して発症率が高い
- アルコール摂取:就寝前のアルコール摂取が症状を悪化させる
- カフェイン:就寝前のカフェイン摂取
- 薬物:一部の抗うつ薬や向精神薬が症状を引き起こすまたは悪化させる
4. 睡眠障害との関連
- 睡眠時無呼吸症候群:呼吸の一時停止後に歯ぎしりが起こることがある
- いびき:気道確保のための無意識の反応として歯ぎしりが起こる場合も
- 不眠症:睡眠の質の低下と関連
睡眠時ブラキシズムがもたらす影響
1. 歯への影響
- 歯の摩耗(エナメル質の損傷)
- 歯の欠け、ひび
- 詰め物やクラウン(被せもの)の破損
- 歯の感覚過敏
2. 口腔周囲への影響
- 顎関節症(顎関節痛、開口制限)
- 咀嚼筋(咬筋・側頭筋)の肥大や痛み
- 歯肉(歯茎)の退縮
3. 全身への影響
- 起床時の頭痛
- 首や肩のこり・痛み
- 耳の違和感(耳鳴り、閉塞感)
- 睡眠の質の低下による日中の疲労感
4. 社会的影響
- 同床者の睡眠妨害
- 歯科治療の増加による経済的負担
すみだ両国まちなかクリニックでの診療
当院の睡眠外来では、睡眠時ブラキシズムに対して以下のような診療・治療を行っています。
1. 詳しい問診と評価
- 症状の詳細(頻度、強さ、関連する痛みなど)
- 生活習慣や精神的ストレスの確認
- 睡眠状態の評価
- 服用中の薬剤の確認
2. 関連する睡眠障害の検査
- 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は簡易検査を実施
- 他の睡眠障害との関連性の評価
3. 総合的な治療アプローチ
生活習慣の改善指導
- ストレス管理法の指導
- 睡眠衛生の改善アドバイス
- カフェイン・アルコール・喫煙などの管理
マウスピース(ナイトガード)の提案
- 歯科医院と連携し、適切なマウスピースの選択をサポート
関連する睡眠障害への対応
- 睡眠時無呼吸症候群が確認された場合はCPAP療法の導入を検討
- 不眠症への対応
必要に応じた専門医療機関の紹介
- 歯科・口腔外科への紹介
- 顎関節症の専門治療が必要な場合は適切な医療機関をご紹介
睡眠時ブラキシズムの対策と改善法
セルフケア
- 就寝前のリラクゼーション:
- 入浴(38〜40℃のぬるめのお湯に15〜20分)
- 軽いストレッチや呼吸法
- アロマセラピー(ラベンダーなどのリラックス効果のある香り)
- 10分程度の瞑想
- 顎のリラクゼーション:
- 意識的に顎の力を抜く練習(日中から習慣づける)
- 顎のマッサージ(咬筋・側頭筋をやさしくほぐす)
- 温めたタオルを顎に当てる
- 生活習慣の見直し:
- 就寝前のカフェイン摂取(コーヒー、お茶、チョコレートなど)を避ける
- 就寝前のアルコール摂取を控える
- 喫煙者は禁煙を検討
- 規則正しい睡眠スケジュールを心がける
- ストレス管理:
- ストレス発散法を見つける(趣味、軽い運動など)
- 心配事を書き出す「心配事ノート」の活用
- マインドフルネスや認知行動療法的アプローチ
専門的対応
- マウスピース(ナイトガード):
- 歯科医院で作製する個人に合わせたマウスピース
- 上顎または下顎に装着し、歯への負担を軽減
- 定期的な調整と確認が必要
- 行動療法:
- バイオフィードバック法(歯ぎしりを検知して音や振動でフィードバック)
- 習慣改善・認知行動療法
- 薬物療法(重度の場合):
- 筋弛緩薬
- 抗不安薬
- ボツリヌス毒素注射(極めて重度の場合)
- 睡眠時無呼吸症候群の治療:
- 睡眠時無呼吸が関連している場合はCPAP療法などの適切な治療
こんな方は早めの受診をおすすめします
- 歯ぎしりにより歯の摩耗や損傷が進行している
- 朝起きた時の顎の痛みや頭痛が強い
- 顎関節症の症状(開口制限、顎の音、痛み)がある
- 歯ぎしりが原因で詰め物が頻繁に取れる
- 睡眠の質が低下し、日中の活動に影響がある
- 同床者の睡眠が妨げられている
よくある質問(Q&A)
Q: 市販のマウスピースは効果がありますか?
A: 市販のマウスピースも一時的な保護効果はありますが、個人の歯の形状に合っていないため、逆に顎関節に負担をかけたり、噛み合わせに影響を与えたりする可能性があります。継続的に使用する場合は、歯科医院で作製したオーダーメイドのマウスピースをおすすめします。
Q: 子どもの歯ぎしりも治療が必要ですか?
A: 小児の歯ぎしりは成長とともに自然に改善することが多いため、歯に明らかな損傷がなければ、経過観察でよいことが多いです。ただし、強い歯ぎしりで歯の摩耗が進む、顎の痛みがある、睡眠の質が低下しているなどの症状がある場合は、小児歯科や小児科への相談をおすすめします。
Q: 歯ぎしりは完全に治りますか?
A: ストレスや生活習慣が主な原因の場合は、それらを改善することで症状が軽減または消失することもあります。しかし、遺伝的要因や構造的な問題が関与している場合は、完全な治癒よりも症状のコントロールと歯への影響を最小限に抑えることが治療目標になります。適切な対策と定期的なフォローアップで、多くの場合症状は十分に管理できます。
まとめ
睡眠時ブラキシズム(睡眠中の歯ぎしり)は、放置すると歯の損傷や顎関節症、頭痛などの原因となる可能性がある睡眠関連運動障害です。ストレスや睡眠障害、生活習慣など様々な要因が関与しており、総合的なアプローチが重要です。
すみだ両国まちなかクリニックでは、患者さん一人ひとりの症状や生活背景に合わせた評価と治療方針の提案を行っています。また、必要に応じて歯科医院などの専門医療機関と連携し、最適な治療をサポートします。「睡眠中の歯ぎしりが気になる」「朝起きると顎や頭が痛い」などのお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。