睡眠中に足がピクピク動く
こんな症状はありませんか?
- 「寝ている間に足や脚がピクピク動くと家族に指摘された」
- 「朝起きると寝具が乱れていることが多い」
- 「一緒に寝ている人から『寝相が悪い』と言われる」
- 「十分に眠ったはずなのに、朝起きても疲れが取れない」
- 「夜中に何度も目が覚めるが、理由がはっきりしない」
- 「日中、原因不明の強い眠気や疲労感がある」
これらの症状は、「周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder: PLMD)」という睡眠障害の可能性があります。主に睡眠中に足や脚が規則的に動く状態で、本人は気づかないことが多く、同床者からの指摘や説明できない睡眠の質の低下から発見されることがあります。
周期性四肢運動障害とは
周期性四肢運動障害は、睡眠中に四肢(主に足や脚)が20〜40秒ごとに規則的に動く状態です。この動きは典型的には以下のような特徴があります:
- 規則的な間隔:通常20〜40秒ごとに繰り返す
- 一定のパターン:足首の背屈(つま先が上に向く動き)、膝や股関節の曲げ伸ばし
- 主に足や脚:まれに腕にも起こることがある
- 持続時間:各動きは0.5〜5秒程度続く
- 連続性:数分から数時間続くことがある
この運動は本人が自覚せずに起きることが多く、睡眠の質を低下させることで日中の眠気や疲労感の原因となります。
周期性四肢運動障害の主な原因
1. 原発性(特発性)
- 加齢:高齢になるほど発生率が高まる
- 遺伝的要因:家族歴がある場合も
2. 続発性(他の疾患に伴うもの)
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群):約80%の患者さんで周期性四肢運動が見られる
- 腎不全や透析治療中の患者さん
- 鉄欠乏状態
- 糖尿病による末梢神経障害
- パーキンソン病などの神経疾患
- 睡眠時無呼吸症候群
3. 薬剤性
- 抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)
- 抗精神病薬
- 抗ヒスタミン薬
- リチウムなど
周期性四肢運動障害が睡眠に与える影響
- 睡眠の分断:足の動きに伴って微小覚醒が生じ、睡眠が断片化
- 深い睡眠(徐波睡眠)の減少:質の高い睡眠が減少
- 日中の眠気や疲労感:断片化された睡眠による日中のパフォーマンス低下
- 起床時の疲労感:「寝た気がしない」「疲れが取れない」と感じる
- 同床者の睡眠障害:パートナーの睡眠も妨げることがある
すみだ両国まちなかクリニックでの診療
当院の睡眠外来では、周期性四肢運動障害に対して以下のような診療・治療を行っています。
1. 詳しい問診と評価
- 睡眠状況や日中の症状の確認
- 同床者からの情報収集(足の動きのパターンや頻度など)
- 既往歴や服用中の薬の確認
- 必要に応じて睡眠日誌の記録をお願いすることも
2. 検査による診断
- 簡易検査:自宅で装着する小型の検査機器を使用し、睡眠中の足の動きや睡眠の質を評価
- 血液検査(鉄欠乏、腎機能、糖尿病など関連疾患のチェック)
- レストレスレッグス症候群の合併評価
- 必要に応じて、より詳細な睡眠検査のために専門医療機関をご紹介
3. 原因に応じた治療
基礎疾患がある場合
- レストレスレッグス症候群の治療
- 鉄欠乏の是正
- 糖尿病など基礎疾患の管理
- 原因と考えられる薬剤の調整
薬物療法(必要な場合)
- 症状の程度に応じた適切な薬剤の選択
- 症状と副作用のバランスを考慮した投薬調整
生活習慣の改善指導
- 睡眠衛生に関するアドバイス
- リラクゼーション法の指導
- 睡眠環境の改善提案
周期性四肢運動障害に対するセルフケア
生活習慣の改善
- 規則正しい睡眠スケジュール:毎日同じ時間に就寝・起床する
- 適度な運動:日中の有酸素運動が睡眠の質を高める(就寝3時間前までに)
- リラクゼーション:就寝前のストレッチや入浴、深呼吸などでリラックス
- 食事と飲料:就寝前のカフェイン、アルコール、大量の水分摂取を避ける
睡眠環境の整備
- 快適な寝具:体に合ったマットレスや枕を選ぶ
- 寝室の環境:静かで暗く、適温(夏は26℃前後、冬は20℃前後)の環境づくり
- 就寝前のルーティン:リラックスできる活動(読書、軽い音楽など)を取り入れる
- 電子機器の制限:就寝1時間前からはスマホやパソコンの使用を控える
パートナーへの配慮
- 別々の寝具:シングルベッドを2つ並べる、セパレートタイプのマットレスを選ぶ
- 部屋の分離:症状が重い時期は別室で寝ることも検討
- 情報共有:症状について理解してもらい、協力を得る
こんな方は早めの受診をおすすめします
- パートナーや家族から「足が頻繁に動く」「寝相が激しい」と指摘された
- 十分な睡眠時間を確保しているのに慢性的な疲労感がある
- 日中、強い眠気で仕事や日常生活に支障が出ている
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)の診断を受けている
- 睡眠中の足の動きに自分でも気づくことがある(目が覚める)
周期性四肢運動障害に関するよくある質問
Q: 症状があっても治療は必要ですか?
A: 睡眠の質に影響がなく、日中の眠気や疲労感などの症状がなければ、必ずしも治療は必要ありません。しかし、睡眠の質が低下していたり、日中の生活に支障がある場合は、診察を受けることをおすすめします。
Q: 周期性四肢運動障害は加齢による自然な変化ですか?
A: 加齢とともに発生率は高まりますが、すべての高齢者に起こるわけではなく、また若年層でも発症することがあります。症状によって睡眠の質が低下している場合は、「自然な変化だから」と放置せず、相談することが大切です。
Q: 周期性四肢運動障害とレストレスレッグス症候群の違いは何ですか?
A: レストレスレッグス症候群は「脚のむずむず感」という自覚症状があり、主に就寝前に起こりますが、周期性四肢運動障害は睡眠中の無意識の動きで、本人が気づかないことが多いという違いがあります。ただし、両者は高い確率で合併します。
まとめ
睡眠中に足がピクピク動く周期性四肢運動障害は、本人が気づかないことも多いですが、睡眠の質を低下させ、日中の生活に影響を及ぼすことがあります。パートナーや家族からの指摘がきっかけで発見されることが多い症状です。
単独で起こることもありますが、レストレスレッグス症候群や他の疾患に伴って発症することも多いため、背景にある原因を特定することが重要です。適切な診断と治療により、睡眠の質を改善し、日中の生活の質を向上させることができます。
すみだ両国まちなかクリニックでは、睡眠中の足の動きが気になる方に対して、簡易検査を含めた適切な評価と個別化された治療プランをご提案します。「睡眠中に足が動く」と言われた方、「十分寝ているのに疲れが取れない」とお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。