心療内科症状

現実にない声や音が聞こえる

「誰もいないのに声が聞こえる」「周囲の人には聞こえない音や音楽が聞こえてくる」「自分の名前を呼ぶ声や、何かをささやく声が聞こえる」
このような経験は「幻聴」と呼ばれ、さまざまな原因で生じる可能性があります。一過性の現象から精神疾患の症状まで幅広い背景がありますが、適切な評価と治療により、多くの場合は症状の改善や対処が可能です。

1.幻聴が生じる主な原因

  1. 精神疾患関連
    • 統合失調症:他者からの批判や命令、解説するような声など、さまざまな幻聴が特徴
    • 気分障害(うつ病、双極性障害):否定的な内容の声が聞こえることがある
    • 強い不安や心的外傷後ストレス障害(PTSD):トラウマ体験に関連した音や声
    • 解離性障害:ストレスや心理的外傷に関連した解離状態での幻聴
  2. 身体・神経疾患
    • てんかん(特に側頭葉てんかん)
    • 脳腫瘍や脳血管障害
    • 認知症(レビー小体型認知症など)
    • 脳炎や髄膜炎
    • パーキンソン病関連疾患
  3. 薬物・物質関連
    • アルコールや薬物の中毒や離脱症状
    • 一部の処方薬の副作用
    • 抗パーキンソン病薬や抗コリン薬の過剰投与
    • 高熱時の一過性の症状
  4. 生理的要因
    • 極度の睡眠不足や断眠
    • 感覚遮断状態
    • 入眠時・覚醒時幻覚(正常な現象)
    • 強いストレスや疲労
  5. その他
    • 難聴や耳鳴りに関連した症状
    • 老年期の一過性の症状
    • 感覚過敏を伴う状態

2.幻聴の主な特徴と種類

  1. 声の幻聴
    • 単純な声(自分の名前を呼ぶ、単語や短い文)
    • 複雑な声(会話、命令、批判、解説など)
    • 自分の思考が声として聞こえる(思考化声)
    • 複数の声が会話する
  2. 非言語性の幻聴
    • 音楽や旋律
    • 動物の鳴き声
    • 機械音やブザー音
    • 足音やノック音
  3. 内容による分類
    • 中立的な内容(日常的な会話や解説)
    • 命令的な内容(特定の行動を命じる)
    • 批判的・侮辱的な内容(自己評価を下げるような内容)
    • 恐怖を与える内容(脅迫や危険を警告する内容)
  4. 発生状況
    • 常に存在する
    • 特定の状況やストレス下で出現
    • 日内変動がある(夕方から夜に悪化するなど)
    • 環境音の中で特に聞こえる(幻聴錯覚)

3.幻聴が与える影響

  1. 心理的影響
    • 不安や恐怖
    • 混乱や戸惑い
    • 自己評価の低下
    • 現実感の喪失
    • 孤立感
  2. 行動面への影響
    • 声に従った行動(命令幻聴の場合)
    • 声を避けるための回避行動
    • 集中力の低下
    • 対人関係の変化
    • 日常生活の機能低下
  3. 社会的影響
    • 対人関係の困難
    • 就労や学業への支障
    • 社会的孤立
    • 偏見や誤解に遭うリスク

4.対処法と自己管理

  1. 症状への向き合い方
    • 幻聴は「脳の誤作動」と理解する
    • 声に従う必要はないと自分に言い聞かせる
    • 現実と非現実を区別する練習をする
    • 信頼できる人に症状を打ち明ける
  2. 環境調整
    • 静かすぎる環境を避け、適度な環境音を確保
    • ストレスや疲労の管理
    • 十分な睡眠の確保
    • 生活リズムの安定
  3. 注意の切り替え
    • 音楽を聴く
    • 他者との会話に集中する
    • 身体を動かす活動
    • マインドフルネス瞑想やリラクセーション
  4. サポートの活用
    • 家族や信頼できる友人のサポート
    • 同様の経験をしている人々のサポートグループ
    • 医療・福祉サービスの利用

5.いつ受診すべき?

  • 幻聴が初めて現れた場合
  • 幻聴が強い苦痛や恐怖を伴う
  • 幻聴が命令的で、従わざるを得ないと感じる
  • 日常生活や社会機能に支障をきたしている
  • 幻聴に加えて、妄想や思考の混乱がある
  • 自傷他害の危険性がある内容の声が聞こえる
  • 身体疾患(高熱、頭部外傷など)に伴って現れた

特に急性の身体症状や高齢者での突然の発症、自傷他害のリスクがある場合は、速やかな受診が必要です。

6.診察・評価で何がわかる?

  1. 問診と精神状態評価
    • 幻聴の詳細な特徴(種類、頻度、内容、状況など)
    • 他の精神症状(妄想、思考障害など)の有無
    • 発症の経緯や経過
    • 生活背景や心理社会的状況
    • 既往歴や家族歴
  2. 身体・神経学的評価
    • 神経学的診察
    • 耳鼻科的評価(難聴や耳鳴りの確認)
    • バイタルサインの確認
    • 身体疾患の徴候
  3. 必要に応じた検査(連携医療機関でのご案内)
    • 血液検査(代謝異常、感染、薬物など)
    • 脳波検査(てんかんの評価)
    • 画像検査(MRI、CTなど)
    • 心理検査

7.すみだ両国まちなかクリニックでのサポート

すみだ両国まちなかクリニックでは、幻聴などの症状でお悩みの患者さんに対し、以下のような診療を行っています。

  1. 丁寧な問診と初期評価
    • 症状の詳細な聞き取り
    • 身体疾患による症状の可能性の評価
    • 精神状態の総合的な評価
    • 生活環境や社会的背景の確認
  2. 基本的な検査
    • 血液検査(代謝異常、感染症、薬物影響などの評価)
    • 身体的健康状態の評価
    • 必要に応じた追加検査
  3. 治療とケア
    • 症状の理解と対処法についての心理教育
    • 必要に応じた薬物療法
      • 抗精神病薬の適切な選択と調整
      • 副作用のモニタリングと対策
      • 最小有効量での治療
    • 心理社会的アプローチ
      • ストレス管理と生活リズムの調整
      • 対処スキルの習得支援
      • 家族を含めた支援体制の構築
  4. 専門医療機関との連携
    • より専門的な評価や治療が必要な場合は、精神科専門医へのご紹介
    • 画像検査や脳波検査が必要な場合は、連携医療機関をご案内
    • 入院治療が必要な場合の適切な医療機関のご紹介
    • 複合的な支援が必要な場合の地域支援体制との連携
  5. 継続的なフォローアップ
    • 症状の経過観察と治療効果の評価
    • 薬物療法の効果と副作用のモニタリング
    • 社会生活の維持・回復に向けたサポート
    • 再発予防のための長期的支援

幻聴は恐ろしい経験ですが、適切な理解と治療により、多くの方が症状のコントロールを取り戻すことができます。すみだ両国まちなかクリニックでは、症状に寄り添いながら、医学的評価と適切な治療の提供、必要に応じた専門医療機関との連携を通じて、患者さんの回復をサポートします。

8.まとめ

  • 現実にない声や音が聞こえる「幻聴」はさまざまな原因で生じる可能性がある
  • 精神疾患だけでなく、身体疾患、薬物の影響、生理的要因など多様な背景がある
  • 症状の内容や性質、発生状況を詳細に評価することで、適切な治療方針が決まる
  • 環境調整、注意の切り替え、サポートの活用などの対処法と、必要に応じた薬物療法が効果的
  • 初発の症状や、命令的・危険な内容の幻聴、日常生活に支障をきたす場合は専門家への相談が重要
  • すみだ両国まちなかクリニックでは、初期評価と基本的な治療の提供、必要に応じた専門医療機関との連携を行う

幻聴に悩まされている方は、決して一人で抱え込まず、ぜひ医療機関にご相談ください。適切な治療により、多くの方が症状の改善を実感しています。

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