心療内科症状
同じ確認を何度も繰り返す
「ガスの元栓を閉めたか何度も確認してしまう」「ドアの施錠を確かめるために何度も家に戻る」「メールの内容を送信前に何十回も読み返す」
このような同じ確認を繰り返す行動は、強迫性障害(OCD)の症状である可能性があります。不安や恐怖から来る確認行為は、一時的に安心感をもたらしますが、すぐに不安が再燃して確認を繰り返す悪循環に陥りやすいのが特徴です。日常生活に支障をきたすほど症状が強い場合は、適切な評価と治療が必要です。
1.繰り返し確認をする主な原因
- 強迫性障害(OCD)
- 侵入的な思考(強迫観念)と、それを中和するための行動(強迫行為)が特徴
- 確認しないと「何か悪いことが起きるかもしれない」という不安
- 完璧にしたいという強い欲求と「不確実さへの耐性の低さ」
- 自分や他者への責任感の強さと、害を与えることへの恐怖
- 不安障害
- 全般性不安障害や社交不安障害などに伴う確認行動
- 漠然とした不安や心配が確認行動につながる
- うつ病関連
- 集中力や記憶力の低下による自信のなさ
- ネガティブな思考パターンと自己不信
- 発達特性
- 自閉スペクトラム症に伴うこだわりや儀式的行動
- 注意欠如・多動症(ADHD)に伴う注意の問題
- 心理社会的要因
- 過去のトラウマや失敗体験
- 厳格な養育環境や高い期待
- 強いストレスや生活の変化
2.繰り返し確認することでの影響
- 日常生活への支障
- 確認行為に多くの時間を費やす(1日に1時間以上)
- 遅刻や予定の変更を余儀なくされる
- 家事、仕事、学業などの効率低下
- 心理的影響
- 慢性的な不安や緊張
- 自己評価の低下
- 恥や罪悪感
- コントロール感の喪失
- 対人関係への影響
- 家族や周囲の人への確認要求による負担
- 行動を隠そうとすることでの孤立
- 他者からの誤解(「神経質」「几帳面すぎる」など)
- 悪循環の形成
- 確認するほど一時的に不安は軽減するが、長期的には不安と確認行為が強化される
- 記憶への自信がさらに低下し、より頻繁な確認を必要とするようになる
3.日常生活での対策
- 認知行動的アプローチ
- 確認行動の記録:頻度、状況、トリガー、不安レベルなどを記録
- 思考の見直し:「絶対に確認しなければ」という考えの妥当性を検討
- 不確実さへの耐性を高める練習:「完璧でなくても大丈夫」と自分に言い聞かせる
- 確認回数の段階的削減:一度に全てをやめるのではなく、少しずつ減らす
- 行動の工夫
- 確認時に意識的に行動する:「今、ドアに鍵をかけています」と声に出す
- 確認行為の儀式化:「この確認は1回だけ」とルールを決める
- 注意をそらす活動:確認したい衝動が生じたら、別の活動に移る
- 確認行為の遅延:「5分待ってから確認する」など時間を置く
- 環境の調整
- チェックリストやアラームの活用
- 写真を撮る(ガスの元栓を閉めた状態など)
- 家族や信頼できる人のサポートを得る
- ストレス要因の軽減
- セルフケア
- 十分な睡眠と規則正しい生活
- リラクセーション法の実践
- 適度な運動
- マインドフルネスや瞑想
4.いつ専門家に相談すべき?
- 確認行為に1日1時間以上費やしている
- 日常生活(仕事、学業、家事など)に明らかな支障がある
- 確認をしないと強い不安や苦痛を感じる
- 家族や周囲の人が行動に困惑している
- 自分なりの対処を試みても改善しない
- 確認行為をコントロールできない感覚がある
- うつ症状や自殺念慮を伴う
早期の専門的治療により、症状の長期化や悪化を防ぐことができます。
5.診察・評価で何がわかる?
- 問診と心理評価
- 症状の詳細(種類、頻度、持続時間、重症度など)
- 強迫観念と強迫行為のパターン
- 日常生活への影響度
- 発症の経緯と経過
- 併存する精神疾患の評価
- 鑑別診断
- 強迫性障害(OCD)
- 他の不安障害
- うつ病
- 自閉スペクトラム症
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 身体疾患(認知症など)
- 心理社会的評価
- ストレス要因や生活環境
- 家族や対人関係の状況
- 対処能力とサポート体制
6.すみだ両国まちなかクリニックでのサポート
すみだ両国まちなかクリニックでは、繰り返し確認する行動でお悩みの患者さんに対し、以下のような診療を行っています。
- 丁寧な問診と評価
- 症状の詳細な評価
- 日常生活への影響の程度
- 背景にある心理的要因の探索
- 身体疾患の可能性の確認
- 基本的な検査(必要に応じて)
- 血液検査(甲状腺機能など、身体疾患の除外)
- 不安や強迫症状の評価スケール
- 治療とケア
- 症状の理解を深めるための心理教育
- 認知行動的アプローチによる対処法の指導
- 確認行動の記録とモニタリング
- 認知の再構成(考え方の見直し)
- 不安への段階的曝露と反応妨害法
- 不確実さへの耐性を高める練習
- 必要に応じた薬物療法
- 強迫症状に対する抗うつ薬(SSRI)の検討
- 不安症状への対応
- 生活リズムの調整とストレス管理法の指導
- 専門医療機関との連携
- より専門的な認知行動療法が必要な場合は、専門医療機関をご紹介
- 複雑な症例や重度の強迫性障害の場合は、精神科専門医へのご紹介
- 発達特性の評価が必要な場合は、専門医療機関をご案内
- 継続的なフォローアップ
- 症状の経過観察と治療効果の評価
- 治療計画の見直しと調整
- 再発予防と長期的な症状管理のサポート
- 家族を含めた支援体制の構築
強迫的な確認行動は「単なる心配性」や「几帳面な性格」ではなく、適切な治療が必要な症状です。すみだ両国まちなかクリニックでは、患者さんの状況に合わせた段階的なアプローチで、症状の改善と日常生活の質の向上を目指します。
7.まとめ
- 同じ確認を繰り返す行動は、強迫性障害などの可能性があり、単なる「神経質」や「心配性」ではない
- 一時的な安心のために確認するが、すぐに不安が再燃して確認を繰り返す悪循環に陥りやすい
- 認知行動的アプローチ(確認行動の記録、思考の見直し、確認回数の段階的削減など)が効果的
- 症状が日常生活に支障をきたす場合は、専門家への相談を検討
- すみだ両国まちなかクリニックでは、心理教育、認知行動的アプローチ、必要に応じた薬物療法など、個々の状況に合わせた支援を提供
繰り返し確認する行動に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、ぜひご相談ください。適切な治療により、多くの方が症状の改善を実感しています。