心療内科症状

特定の出来事を思い出すと怖い

「特定の記憶がよみがえると急に恐怖を感じる」「事故や災害の場面が突然頭に浮かび、動悸や発汗が起きる」「特定の音や匂いで過去のつらい出来事を思い出してしまう」
このような症状は、過去のトラウマ体験に関連したストレス反応である可能性があります。誰にでも起こりうる自然な反応ですが、日常生活に支障をきたすほど強く続く場合は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの可能性も考えられます。適切な理解と対処法、必要に応じた専門的サポートにより、症状の軽減と心の回復を目指すことができます。

1.トラウマ記憶による恐怖反応のメカニズム

  1. 心理的メカニズム
    • トラウマ記憶は通常の記憶とは異なる形で脳に保存される
    • 記憶が断片的で、文脈から切り離された形で保存されやすい
    • 「危険」として強く記憶され、関連する刺激に過敏に反応する
    • 安全な状況でも身体が「危険」と認識してしまう
  2. 生物学的メカニズム
    • 扁桃体(恐怖や情動を司る脳の部位)の過活動
    • 自律神経系の不均衡(交感神経の優位)
    • ストレスホルモン(コルチゾールなど)の異常な分泌パターン
    • 前頭前皮質(理性や判断を司る部位)の機能低下
  3. トラウマ記憶の特徴
    • 言語化されにくい(「言葉にならない恐怖」として存在)
    • 感覚的・身体的な記憶として残りやすい
    • 時間の経過を感じにくい(「今起きている」感覚)
    • トリガー(引き金)により容易に活性化される

2.主な症状

  1. 心理的症状
    • 侵入的な記憶やフラッシュバック(過去の出来事が今起きているように感じる)
    • 悪夢や睡眠の問題
    • 特定の状況や場所の回避
    • 過覚醒(常に警戒している状態)
    • 集中力の低下
    • 未来への悲観的な見方
    • 自分や世界に対する否定的な認知の変化
  2. 身体的症状
    • 動悸や呼吸の変化
    • 発汗や震え
    • 頭痛や筋肉の緊張
    • めまいや吐き気
    • 過度の驚愕反応
    • 疲労感や倦怠感
  3. 行動的症状
    • トラウマを連想させる状況の回避
    • 社会的な引きこもり
    • 衝動的な行動
    • 過度のアルコールや薬物使用
    • 睡眠・食事パターンの変化

3.日常生活での対処法

  1. 安全感を高める方法
    • グラウンディング:「今ここ」に意識を戻す技法
      • 五感を使う(見える物5つ、聞こえる音4つ、触れる感触3つ、匂い2つ、味1つを意識)
      • 物理的に地面や椅子との接触を感じる
    • 安全な場所のイメージトレーニング
    • 呼吸法(ゆっくりとした腹式呼吸)
    • 自分を落ち着かせる言葉やフレーズの用意
  2. 生活習慣の工夫
    • 規則正しい睡眠リズムの確保
    • バランスの取れた食事
    • 適度な運動(ウォーキングなど)
    • リラクセーション法の習得と実践
    • アルコールやカフェインの過剰摂取を避ける
  3. サポートの活用
    • 信頼できる人に気持ちを話す
    • 同じような経験をした人々のサポートグループへの参加
    • 専門家(カウンセラーや医師)への相談
    • セルフヘルプ書籍やオンラインリソースの活用
  4. トリガー(引き金)への対応
    • 自分のトリガーを特定する
    • 可能であれば、トリガーへの段階的な曝露
    • トリガーに遭遇した際の対処プランを事前に作成
    • トリガーが予想される状況での事前準備

4.いつ専門家に相談すべき?

  • 症状が1ヶ月以上続いている
  • 日常生活(仕事、学業、家事など)に支障をきたしている
  • 症状のために社会的孤立が進んでいる
  • 恐怖や不安を和らげるためにアルコールや薬物に頼っている
  • 自傷行為や自殺念慮がある
  • 自分なりの対処法を試みても改善が見られない
  • 悪夢や睡眠障害が続いている

専門家の支援を早期に受けることで、症状の長期化を防ぎ、より効果的な回復が期待できます。

5.診察・評価で何がわかる?

  1. 問診と心理評価
    • 症状の種類、頻度、重症度の評価
    • トラウマ体験とその影響の確認
    • 日常生活への支障度の評価
    • 併存する精神疾患(うつ病、不安障害など)の確認
    • これまでの対処法と効果の確認
  2. トラウマ関連障害の鑑別
    • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
    • 急性ストレス障害
    • 適応障害
    • 複雑性PTSD
    • 解離性障害
  3. 身体的評価
    • ストレス関連の身体症状の確認
    • 睡眠状態の評価
    • 既往症や服用中の薬剤の確認

6.すみだ両国まちなかクリニックでのサポート

すみだ両国まちなかクリニックでは、トラウマ関連の症状に対し、以下のような診療を行っています。

  1. 丁寧な問診と評価
    • 安全な環境での症状の詳細な評価
    • 患者さんのペースを尊重した丁寧な聞き取り
    • トラウマ反応のメカニズムについての説明
    • 日常生活への影響度の確認
  2. 基本的な検査(必要に応じて)
    • 睡眠や身体症状に関連する血液検査
    • ストレス関連の身体症状の評価
  3. 治療とケア
    • 症状の程度に応じた治療計画の立案
    • トラウマ反応への理解を深める心理教育
    • 安定化スキルの獲得サポート
      • グラウンディング技法の習得
      • リラクセーション法の実践指導
      • 感情調整スキルの向上
    • 必要に応じた薬物療法
      • 不安や睡眠障害に対する薬物療法の検討
      • 抑うつ症状に対する抗うつ薬の検討
    • 安全な日常生活のための具体的なアドバイス
  4. 専門医療機関との連携
    • より専門的なトラウマ治療が必要な場合は、専門医療機関をご紹介
    • トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)やEMDR療法などの専門療法が必要な場合は、適切な医療機関へのご案内
    • 複雑なトラウマ歴がある場合は、専門的な治療が可能な医療機関へのご紹介
    • 認知行動療法が必要な場合は、専門医療機関をご紹介
  5. 継続的なフォローアップ
    • 症状の変化や治療効果の評価
    • 安全感を維持するための継続的なサポート
    • 必要に応じた治療計画の見直し
    • 患者さんの回復のペースを尊重した支援

トラウマ反応は「弱さ」ではなく、危険に対する脳と身体の自然な防衛反応です。すみだ両国まちなかクリニックでは、患者さんの安全感を最優先に考え、症状の理解と安定化をサポートします。専門的なトラウマ治療が必要な場合は、適切な医療機関と連携して継続的な支援を提供します。

7.まとめ

  • 特定の出来事を思い出した際の恐怖や身体反応は、トラウマ記憶による自然な反応である
  • フラッシュバック、悪夢、回避行動、過覚醒などの症状が典型的
  • グラウンディングや呼吸法などの安定化スキルが症状の軽減に役立つ
  • 症状が長期間続き、日常生活に支障がある場合は専門家への相談を検討
  • すみだ両国まちなかクリニックでは、症状の理解と安定化のサポート、必要に応じた専門医療機関との連携を提供

トラウマ反応は珍しいものではなく、適切なケアと支援により回復が可能です。一人で抱え込まず、専門家のサポートを活用することで、心の回復への道を歩むことができます。お気軽にご相談ください。

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