小児科症状
犬の鳴き声のような咳が出る
「夜中に子どもが突然、犬の吠えるような咳をし始めた」「息を吸うとき、キューッという音がする」
こうした特徴的な咳は、「クループ症候群」と呼ばれる病態の典型的な症状です。クループは主に乳幼児(6ヶ月〜3歳頃)に多く見られ、特に夜間に症状が出たり悪化したりすることが特徴です。このページでは、クループについての基本的な知識や対処法をご紹介します。
1.クループとは
クループは、喉頭(のどぼとけの辺り)や声門下(声帯のすぐ下)の気道が炎症によって狭くなる状態です。正式には「急性喉頭炎」「急性喉頭気管支炎」などと呼ばれます。
- 原因:多くはパラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルスなどのウイルス感染
- 特徴:特有の「犬の鳴き声」や「アザラシの鳴き声」のような咳(犬吠様咳嗽)
- 年齢:主に生後6ヶ月〜3歳の乳幼児(まれに5〜6歳でも)
- 季節:秋から冬に多いが、一年中発生する可能性あり
2.クループの主な症状
- 特徴的な咳
- 「ワンワン」「ケンケン」といった犬の吠え声に似た乾いた咳
- 咳の前に「ストライダー」と呼ばれる高い音が出ることも(息を吸うときの喘鳴)
- 声のかすれ
- かれた声や嗄声(されいせい)になる
- 進行すると
- 呼吸困難(息を吸う時に胸がへこむ、鼻翼が広がる)
- 不安感や興奮
- チアノーゼ(唇や爪が青紫色になる)※重症の場合
- その他の症状
- 軽度〜中等度の発熱
- 鼻水、のどの痛み(先行することが多い)
- 食欲不振
3.クループの経過と特徴
- 発症:多くは風邪のような症状から始まり、夜間に突然咳が悪化する
- 経過:通常3〜5日で改善するが、咳は1週間程度続くことも
- 再発:一度クループを経験した子どもは再発しやすい傾向がある
- 時間帯:夜間(特に就寝後2〜3時間)に症状が悪化することが多い
- 年齢による差:乳幼児ほど気道が狭いため、症状が重くなりやすい
4.ご家庭でできる対応
軽症〜中等症のクループでは、以下の対応が症状改善に役立つことがあります:
- 冷たい外気を吸わせる
- 窓を開けて外の冷たい空気を吸わせる(5〜10分程度)
- 寒い季節なら、しっかり着せて窓の近くで抱っこする
- 加湿
- 浴室に熱いシャワーを出して蒸気を充満させ、その中で5〜10分過ごす
- 加湿器を使用する
- 姿勢の工夫
- 上体を少し起こして寝かせる
- 抱っこして安心させる
- 水分補給
- 少量ずつこまめに水分を与える
- 安心させる
- 親も落ち着いて対応する(子どもの不安が高まると症状が悪化することも)
ただし、以下のような場合は、家庭での対応だけでなく医療機関の受診が必要です。
5.受診すべきタイミング
以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください:
- 呼吸が困難に見える(肋骨の間がへこむ、鼻翼が広がる)
- 呼吸が非常に速い(安静時に40回/分以上)
- 息を吸うときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする
- 唇や爪が青白い・紫色になる
- 顔色が悪く、ぐったりしている
- 水分が摂れない
- 38.5℃以上の高熱が続く
- 家庭での対応で改善しない、または症状が悪化する
特に呼吸困難が強い場合は、救急車を呼ぶことも検討してください。
6.すみだ両国まちなかクリニックでのサポート
当院では、クループが疑われるお子さまに対して以下の診療を行っています:
- 問診・診察
- 咳の性状や発症状況の詳細な確認
- 呼吸状態、酸素飽和度の評価
- 喉の観察
- 治療
- 症状の程度に応じた適切な治療
- 軽症〜中等症:ステロイド薬の処方(炎症を抑え、気道の狭窄を改善)
- 必要に応じて吸入療法の指導
- 生活指導
- 家庭での対応方法の説明
- 再発時の対応についてのアドバイス
- 症状が悪化した場合の受診目安
重症のクループや、呼吸困難が強い場合には、より高度な医療機関での治療が必要なこともあります。その場合は適切な医療機関をご紹介いたします。
7.クループと間違えやすい疾患
クループに似た症状を示す、他の疾患には以下のようなものがあります:
- 急性喉頭蓋炎
- より年長児(2〜6歳)に多い
- 高熱を伴うことが多い
- 嚥下痛(飲み込みにくい)を伴う
- より緊急性が高い
- 細菌性気管炎
- 高熱と膿性の痰を伴う
- 異物誤嚥
- 咳や呼吸困難の突然の発症
- 前兆となる風邪症状がない
これらは適切な診断と対応が必要ですので、心配な症状があれば医療機関を受診してください。
8.予防と注意点
- 風邪予防
- 手洗い・うがいの徹底
- 人混みを避ける(特に流行期)
- 十分な休息と栄養摂取
- 再発予防
- クループを繰り返す場合は、医師と相談し対策を立てる
- 風邪の初期症状が出たら早めの対応を
- 普段から
- 乾燥しがちな季節は部屋の加湿を心がける
- 受動喫煙を避ける(タバコの煙は気道の刺激となる)
9.まとめ
- 「犬の鳴き声」のような特徴的な咳はクループの代表的な症状
- 多くは夜間に症状が悪化し、冷たい空気や加湿で改善することがある
- 呼吸困難が強い場合や症状が悪化する場合は迅速な医療機関受診が必要
- すみだ両国まちなかクリニックでは、クループの診断と治療、家庭での対応法についてサポートを提供
- 多くの場合3〜5日で改善するが、再発することもある
お子さまの咳が心配な場合は、すみだ両国まちなかクリニックにご相談ください。症状の程度に応じた適切な対応をご案内いたします。