小児科症状
口内の水疱で食事を拒否する
「子どもの口の中に白い水ぶくれができて痛がっている」「食べ物を見ると嫌がって泣き出す」
お子さまの口の中に水疱(水ぶくれ)ができると、強い痛みを伴うことが多く、食事や水分摂取を嫌がるようになります。口内の水疱は主にウイルス感染症によって引き起こされ、適切なケアが必要です。痛みを和らげ、脱水を防ぐための対処法を知っておくことが重要です。
1. 口内の水疱の主な原因
小児の口内に水疱ができる主な原因には以下のようなものがあります:
- 手足口病
- コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症
- 口内の水疱に加えて、手のひら、足の裏、指などにも発疹や水疱が現れる
- 夏から秋にかけて流行し、保育園や幼稚園での集団発生が多い
- ヘルパンギーナ
- コクサッキーウイルスなどによる感染症
- のどの奥(軟口蓋、扁桃)に小さな水疱や潰瘍ができる
- 高熱を伴うことが多い
- 手足口病と同様に夏から秋に流行
- 単純ヘルペスウイルス感染症(ヘルペス性歯肉口内炎)
- 1型単純ヘルペスウイルスによる初感染
- 口唇や歯茎、頬の内側に痛みを伴う水疱や潰瘍
- 発熱、リンパ節腫脹を伴うことも
- アフタ性口内炎
- 原因は明確ではないが、免疫機能の異常、ストレス、ビタミン不足などが関与
- 口腔内に単発または複数の小さな潰瘍
- 再発を繰り返すことがある
- その他
- カンジダ症(鵞口瘡):白色のカビ状の膜が口内に付着
- 水痘(水ぼうそう):口内にも水疱ができることがある
- 薬剤アレルギーによる粘膜疹
2. 症状の特徴と見分け方
疾患ごとの口内水疱の特徴:
- 手足口病
- 頬の内側、舌、歯茎などに小さな水疱や潰瘍
- 手足にも特徴的な発疹があるため診断が比較的容易
- 38度前後の発熱を伴うことも
- ヘルパンギーナ
- のどの奥(軟口蓋)に灰白色の小さな水疱(その後潰瘍に)
- 高熱(39〜40度)を伴うことが多い
- 手足には発疹が見られない
- ヘルペス性歯肉口内炎
- 歯茎が赤く腫れ、痛みを伴う
- 小さな水疱が集まって現れ、すぐに破れて潰瘍になる
- 38〜40度の発熱、倦怠感を伴うことが多い
- アフタ性口内炎
- 周囲が赤く縁取られた黄白色の小さな潰瘍
- 通常は発熱を伴わない
- 刺激物の摂取で痛みが増強
3. 食事拒否に伴うリスク
口内の痛みから食事や水分摂取を拒否することで、以下のようなリスクが生じることがあります:
- 脱水
- 水分摂取不足による脱水症状
- 尿量減少、口の渇き、涙が出ない、活気低下などの症状
- 栄養不足
- 長期間食事量が減ることによる栄養障害
- 体重減少、回復の遅れ
- 症状の悪化
- 口腔内が乾燥することで潰瘍の治癒が遅れる
4. 受診すべきタイミング
以下のような場合は医療機関を受診しましょう:
- 高熱(38.5度以上)が続く
- 水分をほとんど摂らない(6時間以上)
- 脱水症状がある(おしっこの回数が減る、口が乾く、涙が出ない)
- 口内の症状が1週間以上改善しない
- 強い痛みで睡眠が妨げられる
- 5歳未満の子どもで多数の口内炎がある
- いつもより元気がなく、ぐったりしている
5. 家庭でできるケア
お子さまの苦痛を和らげ、水分・栄養摂取を促すための工夫:
- 水分補給の工夫
- 冷たい飲み物やアイス、シャーベットなどが痛みを和らげることも
- ストローを使用して痛みのある部分を避ける
- 小さなスプーンで少量ずつ頻回に与える
- 食事の工夫
- 刺激の少ない柔らかい食事(おかゆ、スープ、ヨーグルトなど)
- 熱いものや辛いもの、酸味の強いものは避ける
- 冷たいものや常温のものが食べやすいことが多い
- 口腔ケア
- 食後に水やぬるま湯でやさしくうがい(できる年齢の場合)
- 乳幼児の場合は、水を含ませたガーゼで優しく口内を拭く
- 痛みの緩和
- 医師の指示に従った鎮痛薬の使用
- 口内炎用の市販薬(医師に相談の上で使用)
- 快適な環境作り
- 痛みがある時は無理に食べさせず、少しずつ様子を見る
- 痛みが弱まる時間帯を見極めて水分や食事を促す
6. すみだ両国まちなかクリニックでのサポート
当院では、口内の水疱で食事を拒否するお子さまに対して以下のような診察・治療を行っています:
- 詳しい問診と診察
- 症状の経過、他の症状の有無、周囲での流行状況などの確認
- 口腔内の状態と水疱・潰瘍の特徴の確認
- 手足などの皮膚症状の確認
- 脱水症状の評価
- 必要に応じた検査
- ウイルス感染症の可能性を評価
- 発熱を伴う場合の検査
- 発熱を伴う場合の迅速検査
- 最新の検査機器「ID NOW」を導入
- 陽性の場合は最短5分、陰性でも13分以内に結果が得られます
- PCR検査と同等の精度を持ち、陽性一致率93.3%、陰性一致率98.4%と報告されています
- 鼻腔からの検体採取で、侵襲性が低く、検査時の不快感を最小限に抑えます
- 適切な治療と生活指導
- 痛みを和らげる薬(口内炎用薬、鎮痛薬)の処方
- 水分・栄養摂取の具体的な工夫のアドバイス
- 脱水予防のための指導
- 感染拡大防止のための指導
- 保育園・幼稚園の登園目安についての説明
- 経過観察とフォローアップ
- 症状の改善を確認するための再診
- 脱水や二次感染などの合併症の確認
7. 専門医療機関との連携
当院で対応が難しい場合や、より専門的な治療が必要な場合は、連携医療機関をご紹介します:
- 重度の脱水で点滴が必要な場合
- 口内炎が重症で経口摂取が全くできない場合
- 口腔内の二次感染が疑われる場合
- 基礎疾患(免疫不全など)がある場合
- 入院治療が必要と判断される場合
8. 感染拡大防止と登園・登校の目安
口内の水疱を引き起こすウイルス感染症の拡大を防ぐポイント:
- 手洗いの徹底
- 特に排泄物の処理後や食事前の手洗い
- ウイルスは便中に排泄され、長期間感染力を持つ
- タオルや食器の共用を避ける
- 個人用のタオルや食器を使用
- 家族内での感染予防
- 登園・登校の目安
- 手足口病:発熱や口内の痛みなど全身状態が落ち着けば登園・登校可能
- ヘルパンギーナ:解熱し、全身状態が良ければ登園・登校可能
- 各施設の方針に従ってください
9. まとめ
- 口内の水疱は主にウイルス感染症によって引き起こされ、強い痛みを伴います
- 痛みによる食事・水分摂取の拒否から脱水症状に注意が必要です
- 冷たい飲み物や柔らかい食事など、痛みを和らげる工夫で摂取を促します
- すみだ両国まちなかクリニックでは、適切な診断と症状緩和のための治療、生活指導を行っています
お子さまの口内の水疱でお困りの際は、すみだ両国まちなかクリニックまでご相談ください。痛みの緩和と水分・栄養摂取のサポートで、お子さまの快適な回復をお手伝いします。