神経障害性疼痛がつらい—補助鎮痛薬の追加で日中活動が保てた
「ビリビリとしびれるような痛みが続いて夜も眠れない」
「痛み止めを飲んでいるけれど、なかなか痛みが引かない」
「強い薬を使うと、今度は眠気が強くなって一日中ぼんやりしてしまうのが怖い」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。ご病気や加齢に伴う痛みの中には、一般的な痛み止めだけでは対処が難しい種類のものがあります。それが「神経障害性疼痛」と呼ばれる痛みです。
痛みがつらいと、どうしても動くのが億劫になり、気持ちも塞ぎ込みがちになってしまいます。しかし、痛みを抑えるために強い薬を使いすぎて、一日中寝て過ごすことになってしまっては、本来のご自分らしい生活とは言えなくなってしまいます。
この記事では、なかなか取れない痛みのコントロールにおいて重要な鍵となる「補助鎮痛薬」について解説します。お薬を適切に組み合わせることで、痛みを和らげつつ、日中起きて過ごす活動的な時間を保てる可能性があることをお伝えできればと思います。
長引く「ビリビリ」「ジンジン」する痛み…神経障害性疼痛とは
痛みには大きく分けて、怪我や炎症による痛み(侵害受容性疼痛)と、神経そのものが傷ついたり圧迫されたりして起こる痛み(神経障害性疼痛)があります。
神経障害性疼痛は、帯状疱疹の後遺症や、糖尿病の合併症、坐骨神経痛、あるいはがんが神経に浸潤した場合など、さまざまな原因で起こります。患者様はよく、この痛みを「電気が走るようなビリビリする痛み」「焼けるようなヒリヒリする痛み」「しびれるようなジンジンする感覚」と表現されます。
一般的な痛み止めが効きにくい理由
通常、私たちが頭痛や関節痛などで使う一般的な痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬など)は、炎症を抑えることで痛みを和らげます。しかし、神経障害性疼痛は神経の伝達異常によって起こっているため、炎症を抑える薬では十分な効果が得られないことが少なくありません。
そのため、「痛み止めを飲んでいるのに全然効かない」という状況が生まれてしまいます。ここで無理に同じ種類の痛み止めを増やしても、痛みは変わらずに胃腸への負担などの副作用だけが増えてしまうリスクがあります。だからこそ、痛みの種類に合わせたお薬の選択が必要になります。
日常生活への影響と「活動」の大切さ
痛みが続くと、どうしても体を動かすことが怖くなり、ベッドで横になっている時間が増えてしまいます。しかし、過度な安静は筋力の低下を招き、食欲を落とし、さらにまた別の不調を引き起こすという悪循環につながりかねません。
また、ご家族との会話や、好きなテレビ番組を見る時間、窓の外を眺める時間など、日中の「活動」は、心の健康を保つためにも非常に大切です。痛みの治療においては、単に「痛みゼロ」を目指すだけでなく、「その人らしく過ごせる時間をどう守るか」という視点が欠かせません。
痛みの緩和と生活の質を両立する「補助鎮痛薬」の役割
そこで重要な役割を果たすのが「補助鎮痛薬」です。これは文字通り、メインの痛み止めを「補助」するお薬ですが、神経障害性疼痛においては、これが主役級の働きをすることがあります。
補助鎮痛薬とはどのようなお薬か
補助鎮痛薬には、もともとは抗うつ薬や抗けいれん薬(てんかんの薬)として開発されたものが多く含まれます。「うつ病やてんかんではないのに、なぜ?」と驚かれる患者様もいらっしゃいますが、これらのお薬には、興奮した神経を鎮めたり、痛みを伝える物質の放出を抑えたりする作用があることが分かっています。
神経障害性疼痛に対しては、神経の過剰な興奮を落ち着かせることで、あの独特な「ビリビリ」「ジンジン」といった痛みを和らげる効果が期待できます。現在では、痛みの治療薬として正式に認められ、広く使われているお薬がいくつもあります。
ベースの痛み止めと組み合わせるメリット
医療用麻薬などの強い痛み止め(オピオイド)を使っている場合でも、神経の痛みが残ってしまうことがあります。ここでオピオイドの量だけをどんどん増やしてしまうと、強い眠気や吐き気、便秘、意識がぼんやりするといった副作用が強く出てしまい、日中の活動に支障をきたすことがあります。
ここで補助鎮痛薬を「追加」して組み合わせることで、オピオイドの増量を抑えつつ、異なる作用メカニズムで痛みにアプローチすることができます。つまり、副作用のリスクを分散させながら、より効果的に痛みをカバーできる可能性があるのです。これにより、「痛みを抑えつつ、日中は意識をはっきりと保つ」というバランスを目指しやすくなります。
「日中活動を保つ」ための薬の調整と訪問診療
補助鎮痛薬は非常に有用な選択肢ですが、使い始めには少し注意が必要です。初めて服用する際には、ふらつきや眠気が出ることがあるからです。だからこそ、きめ細やかな調整が大切になります。
副作用(眠気やふらつき)との付き合い方
補助鎮痛薬を開始する際は、少量からスタートし、体の反応を見ながら少しずつ量を調整していくのが一般的です。最初は眠気が出ても、数日で体が慣れてくることもよくあります。
「薬を追加したら眠くなるのではないか」と不安に思われるかもしれませんが、逆に言えば、補助鎮痛薬がうまく効いて痛みが楽になれば、眠気の強い他の強い痛み止めを減らせる可能性もあります。結果として、トータルの薬のバランスが整い、日中の覚醒度が上がって活動しやすくなるケースは珍しくありません。
夜寝る前に服用することで、夜間の痛みを和らげて睡眠の質を高めつつ、日中の眠気の影響を最小限にするといった工夫も行います。
訪問診療だからできる、生活に寄り添った処方調整
病院への通院では、次回の診察まで数週間空いてしまい、その間にお薬が合わなくても相談しにくいということがあるかもしれません。
一方、訪問診療では、医師や看護師が定期的にご自宅を訪問し、患者様の生活の様子を直接拝見します。「日中、テレビを見ながらうとうとしていないか」「トイレまで歩くときにふらついていないか」「食事はしっかり摂れているか」といった生活の質(QOL)を肌感覚で確認できるのが大きな強みです。
「もう少し痛みをとりたいけれど、日中の散歩は続けたい」
「今の薬だと眠すぎるので、朝の分を調整したい」
こうした患者様やご家族の具体的な希望に合わせて、ミリ単位でお薬の量や飲むタイミングを調整することができます。これが、訪問診療における痛みの治療の真髄です。
まとめ
神経障害性疼痛のつらい痛みは、我慢すればいつか治るというものではありません。また、一般的な痛み止めが効かないからといって、打つ手がないわけでもありません。
補助鎮痛薬を適切に組み合わせることで、痛みを和らげることと、日中をご自分らしく起きて過ごすことの両立を目指すことができます。お薬が増えることへの不安もあるかと思いますが、専門家がしっかりと副作用を監視しながら調整すれば、生活の質を大きく改善できる可能性があります。
「痛みのせいで動けなくなってしまった」
「薬の調整がうまくいかず、困っている」
そのような時は、ぜひ私たちにご相談ください。ご自宅での療養生活が、少しでも穏やかで笑顔のあるものになるよう、私たちが全力でサポートいたします。

