慢性腎臓病で通院が負担—在宅採血と服薬調整で体調が安定した
慢性腎臓病(CKD)の治療は長期にわたるため、定期的な通院が欠かせません。しかし、ご高齢の方や足腰に不安を抱える方にとって、病院への往復は想像以上に大きな負担となることがあります。「検査数値が気になるけれど、病院に行くだけで疲れてしまう」「待ち時間が長く、帰宅するとぐったりしてしまう」といったお悩みをご本人やご家族から伺うことは少なくありません。
腎臓の機能を守るためには、継続的な検査と細やかなお薬の調整が必要ですが、通院そのものがストレスになり、かえって体調を崩してしまっては本末転倒です。
そこで今回は、通院が困難になってきた慢性腎臓病の患者様に向けて、ご自宅で受けられる「訪問診療」による管理について解説します。自宅にいながら採血検査や服薬調整を行うことで、どのように体調の安定を目指せるのか、その仕組みとメリットについてお話しします。
慢性腎臓病の治療において「通院」が大きな壁になる理由
慢性腎臓病は、自覚症状が少ない初期段階から、徐々に腎機能が低下していく病気です。進行を食い止めるためには、医師による定期的な診察と検査が不可欠です。しかし、病状が進むにつれて、あるいはご年齢を重ねるにつれて、通院そのものが難しくなるケースが増えてきます。
移動や待ち時間による身体的・精神的ストレス
総合病院や専門クリニックへの通院は、移動時間だけでなく、受付から診察、会計、薬の受け取りまで長い時間を要することが一般的です。特に腎臓病をお持ちの方は、疲れやすさやダルさを感じていることも多く、長時間の外出は大きな体力消耗につながります。
また、移動手段の確保も切実な問題です。ご家族が毎回仕事を休んで付き添う必要がある場合や、介護タクシーの手配など、周囲のサポート体制における負担も無視できません。こうした事情から、「辛いけれど我慢して通院している」あるいは「通院が億劫で、受診間隔が空いてしまっている」という方もいらっしゃいます。
感染症リスクへの不安
腎機能が低下している患者様は、免疫力が低下している傾向にあります。そのため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると重症化しやすいというリスクを持っています。
多くの患者様が集まる病院の待合室に長時間滞在することは、それだけで感染症のリスクにさらされることになります。ご自宅での療養は、こうした外部との接触機会を減らし、感染リスクをコントロールするという意味でも有効な選択肢となります。
訪問診療で実現できる「自宅での腎臓病管理」
「自宅で病院と同じような診療が受けられるの?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。訪問診療では、医師や看護師が定期的に患者様のご自宅を訪問し、計画的な医学管理を行います。慢性腎臓病の管理において、具体的にどのようなことができるのかをご説明します。
自宅での「在宅採血」で腎機能をモニタリング
慢性腎臓病の治療で最も重要なのは、血液検査によって腎機能の状態(クレアチニン値やeGFRなど)や、カリウム、リンなどの電解質バランス、貧血の有無などを定期的に確認することです。
訪問診療では、ご自宅で採血を行うことが可能です。採取した血液は検査機関へ送られ、病院での検査と同様に詳細なデータを得ることができます。医師はこの検査結果に基づき、腎機能の推移を把握し、食事療法の見直しや治療方針の決定を行います。わざわざ病院に行かなくても、自宅のリラックスした環境で必要な検査を受けられることは、患者様にとって大きなメリットとなります。
生活実態に合わせたきめ細かな「服薬調整」
腎臓病の治療薬は種類が多く、血圧を下げる薬、尿酸値を下げる薬、カリウムを吸着する薬、貧血を改善する薬など多岐にわたります。腎機能の変動に合わせて、これらの薬の種類や量を適切に調整しなくてはなりません。
訪問診療の大きな特徴は、医師が患者様の「生活の場」を見られることです。「処方された薬が飲みづらくて残っている」「食事の時間が不規則で薬を飲み忘れてしまう」といった、診察室では見えにくい服薬の実態を把握しやすくなります。
例えば、飲み忘れが多い場合には、一包化(1回分を1つの袋にまとめること)を提案したり、服薬回数の少ない薬に変更したりするなど、患者様の生活スタイルに合わせた調整が可能です。適切に薬を飲めるようになることは、結果として腎機能の保護と体調の安定に直結します。
血圧管理と食事指導の連携
腎臓への負担を減らすためには、血圧の管理と食事療法(減塩・タンパク質制限など)が欠かせません。訪問診療では、毎回ご自宅で血圧を測定し、普段の血圧手帳の記録も確認しながら、血圧のコントロール状態をチェックします。
また、ご自宅の食卓を見ることで、「どのような食事を食べているか」「塩分を摂りすぎていないか」といった具体的なアドバイスが可能になります。必要であれば、訪問看護師や管理栄養士と連携し、ご自宅での食事療法のサポート体制を整えることもできます。
自宅療養が体調安定につながる理由
通院の負担をなくし、訪問診療に切り替えることで、体調が安定するケースは多く見られます。それは単に「楽になるから」という理由だけではありません。
ストレスの軽減と生活リズムの整い
通院に伴う疲労やストレスがなくなると、日常生活にゆとりが生まれます。睡眠や休息を十分に取れるようになり、食欲が安定することも少なくありません。心身ともにリラックスした状態で過ごすことは、血圧の安定にも寄与し、結果として腎臓への負担軽減につながることが期待できます。
変化への迅速な対応
訪問診療は基本的に月2回程度の定期訪問を行いますが、体調が急変した場合には、24時間365日対応の連絡体制が整っています。「足がむくんで苦しい」「急に食欲が落ちた」といった変化があった際、すぐに電話で相談でき、必要に応じて往診などの対応が受けられます。
通院のみの場合、次回の予約日まで我慢してしまい、受診した時には状態が悪化していたということが起こり得ます。しかし、訪問診療では早めの対処が可能になるため、重症化を防ぎ、入院を回避できる可能性が高まります。
安心して在宅生活を続けるために
慢性腎臓病だからといって、必ずしも辛い通院を続けなければならないわけではありません。通院が困難になってきた段階で、訪問診療という選択肢を検討することは、患者様ご本人のQOL(生活の質)を守るための前向きな決断です。
訪問診療を導入することで、住み慣れたご自宅で、家族に見守られながら、適切な医療管理を受けることができます。採血も薬の調整も、プロフェッショナルがご自宅へ伺って行いますので、どうぞ安心してお任せください。
「最近、通院後の疲れがひどい」「自宅での薬の管理に不安がある」といったお悩みがありましたら、まずは一度ご相談ください。現在の病状や生活環境を詳しく伺った上で、私たちにどのようなサポートができるか、丁寧にご説明させていただきます。患者様とご家族が、心穏やかな毎日を過ごせるようお手伝いいたします。

