実は血圧が高くてふらつきがあったが、訪問診療の治療によって外出ができるようになった。
「最近、血圧が高くてふらふらする」
「病院に行きたいけれど、通院の道のりで転んでしまわないか心配」
もし、ご自身やご家族がこのようなお悩みを抱えているなら、毎日の生活に大きな不安を感じていらっしゃることでしょう。血圧のお薬をもらうために無理をして病院へ行き、その疲れで余計に体調を崩してしまう。そんな悪循環に陥っている方は少なくありません。
実は、訪問診療を利用することで、単にお家で診察を受けるだけでなく、諦めていた「外出」や「自分らしい生活」を取り戻された患者様がいらっしゃいます。
今回は、高血圧によるふらつきで通院が困難になっていた方が、訪問診療への切り替えをきっかけに体調を整え、再び外の空気を楽しめるようになった事例をご紹介します。通院に限界を感じている方への、ひとつの希望となれば幸いです。
通院が「怖い」と感じていませんか?高血圧とふらつきの悪循環
年齢を重ねると、血圧のコントロールが難しくなったり、足腰の筋力が低下してふらつきやすくなったりすることは珍しくありません。しかし、真面目な方ほど「ちゃんとお医者さんに診てもらわなければ」という責任感から、無理をして通院を続けてしまいがちです。
「病院に行くだけ」が命がけの大仕事に
健康な方にとっては簡単な「通院」も、ふらつきがある方にとっては大きなハードルです。
着替えをして、バスやタクシーに乗り、病院の待合室で長時間待ち、診察を受けて薬局へ寄って帰ってくる。この一連の動作は、体力だけでなく気力も激しく消耗します。
特に血圧が高い方の場合、移動のストレスや「転んだらどうしよう」という緊張感そのものが、さらに血圧を上昇させてしまうことがあります。治療のために病院へ行っているのに、その通院自体が体調悪化の原因になってしまう。これでは本末転倒です。
外出を避けることで進む筋力低下
ふらつきへの恐怖心が強くなると、次第に外出そのものを避けるようになります。「外に出ると危ないから」と家に閉じこもりがちになると、今度は活動量が減り、さらに足腰の筋力が弱ってしまいます。
そうして「もう外には出られないかもしれない」と自信を失い、気持ちまで沈んでしまうケースも少なくありません。今回ご紹介する患者様も、最初は「もう家の中でじっとしているしかない」と諦めかけていました。
訪問診療への切り替えで起きた変化
「通院がもう限界かもしれない」と感じたとき、選択肢の一つとなるのが訪問診療です。医師や看護師が定期的にご自宅へ伺うこのスタイルに変えたことで、患者様の生活にはいくつかの変化が生まれました。
自宅という「安心できる場所」での血圧管理
病院で血圧を測ると、緊張して普段より高い数値が出てしまう「白衣高血圧」という言葉をご存じでしょうか。訪問診療の大きなメリットは、患者様が一番リラックスできるご自宅で診察を行えることです。
「わざわざ出かけなくていい」「先生が来てくれる」という安心感は、それだけで血圧を安定させる効果が期待できます。今回の方も、通院のプレッシャーから解放されたことで、張り詰めていた糸がほどけ、本来の血圧の状態を正確に把握できるようになりました。
生活環境に合わせたきめ細かな調整
診察室では見えない情報が、ご自宅にはたくさんあります。普段どのような椅子に座っているのか、食事の内容はどうか、お薬の管理はどうしているのか。私たち医師や看護師は、ご自宅の様子を拝見しながら、その方の生活に合わせたアドバイスを行います。
例えば、ふらつきの原因がお薬の効きすぎによるものであれば、量を微調整します。また、家の中の動線を確認し、転倒のリスクが高い場所に手すりの設置を提案したり、ケアマネジャーさんと相談して介護サービスを調整したりすることもあります。こうして「医学的な管理」と「生活環境の整備」を同時に進めることで、少しずつ体調の土台が整っていきました。
「また外に出たい」を叶えるために
訪問診療を始めて数ヶ月。血圧が安定し、ふらつきも治まってきた頃、患者様から「近くの公園まで行ってみたい」という言葉が出ました。以前はあんなに怖がっていた外出に対して、意欲が湧いてきたのです。
「もしもの時は先生がいる」という自信
外出ができるようになった一番の理由は、体調の回復はもちろんですが、「心の自信」が戻ってきたことが大きいでしょう。
訪問診療では、定期的な訪問に加えて、体調が急変した際の24時間365日の連絡体制(往診体制)を整えています。「何かあっても、すぐに相談できるかかりつけ医がいる」という安心感が、一歩を踏み出す勇気につながったのです。
リハビリとの連携で足取りを軽く
外出を実現するためには、医療だけでなくリハビリテーションの力も重要です。
訪問看護師や訪問リハビリスタッフと連携し、室内での歩行訓練から始め、徐々に玄関先、そして家の周りへと活動範囲を広げていきました。
最初はスタッフが付き添いながらの短い散歩でしたが、風の匂いや季節の花を目にすることは、何よりの薬になります。自信がつくと表情も明るくなり、その精神的な充実がさらに血圧を安定させるという良い循環が生まれました。
すみだ両国まちなかクリニックの想い
訪問診療のゴールは、単に病気の数値を良くすることだけではありません。病気や障害があっても、住み慣れた地域で、その人らしく穏やかに過ごせるように支えること。そして、今回のように「また外に出たい」「美味しいものが食べたい」といった希望を叶えるお手伝いをすることこそが、私たちの役割だと考えています。
当院では、患者様ご本人はもちろん、それを支えるご家族様の不安にも寄り添います。
「通院が大変になってきたけれど、訪問診療に変えるほどなのかな?」
「まだ自分で歩けるけれど、将来が不安」
そのような段階からのご相談も大歓迎です。
まとめ
高血圧やふらつきで通院が困難になっていた方が、訪問診療によって体調を整え、再び外出を楽しめるようになった事例をご紹介しました。
通院ができなくなることは、決して「終わり」ではありません。療養の場所を病院からご自宅へ移すことで、ストレスなく治療を続けられ、生活の質を向上させるチャンスでもあります。
「通院が辛い」と我慢を続けてしまう前に、ぜひ一度、訪問診療という選択肢を検討してみてください。ご自宅での療養について不安なことや分からないことがあれば、どんな小さなことでも構いません。私たちにお話を聞かせていただけませんか。
いつでもお気軽にご相談ください。お待ちしております。

