注意欠如・多動症(ADHD)
日常生活の中で、「約束の時間を守れない」「計画的に物事を進めるのが苦手」「じっとしているのが苦痛」といったお悩みにより、社会生活や通院の継続に大きなストレスを感じてはいらっしゃらないでしょうか。ご本人様はもちろん、サポートされるご家族にとっても、周囲の理解が得られにくい環境での療養は孤立感を深める原因となります。
私たちは、そのような生きづらさや通院の困難さを抱える患者様に対し、訪問診療(在宅医療)という選択肢を提供しています。住み慣れたご自宅で、医師や医療スタッフが定期的に訪問し、心身の健康をサポートします。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。お一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。
疾患と訪問診療の対象
注意欠如・多動症(ADHD)とは
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意(気が散りやすい、忘れ物が多い)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくとすぐに行動してしまう)を主な特徴とする発達障害の一つです。これらは性格やしつけの問題ではなく、脳の機能的な特性によるものです。
一般的にADHDは外来通院で治療を行うことが多い疾患ですが、特性の程度によっては、計画的な受診行動そのものが困難になるケースが少なくありません。予約日時を忘れてしまう、待合室で待つことに強い苦痛を感じる、あるいは二次障害としてうつ状態や引きこもり(対人恐怖)を併発し、外出自体ができなくなってしまうことがあります。
訪問診療の視点では、単に診断をつけることだけでなく、上記のような特性により「必要な医療が途絶えてしまっている状態」や「生活環境が著しく乱れ、健康を害している状態」を、医療的な介入が必要な状態と捉えています。
訪問診療の対象となる方
ADHDの特性をお持ちで、以下のような状況にある方が訪問診療の対象となります。
- 通院が困難な状態の方
- 外出への強い不安や、うつ症状、パニック障害などを併発し、クリニックへ通うことができない。
- 時間の管理や移動の計画を立てることが極度に苦手で、予約通りの通院が継続できない。
- 身体疾患を合併されている方
- 高齢で認知機能の低下や身体的な障害があり、かつADHDの特性による多動や衝動性があるため、ご家族による通院介助が困難な場合。
- 服薬管理や生活リズムの維持が困難な方
- ご自身での服薬管理が難しく、飲み忘れや過量服薬のリスクがあるため、定期的な訪問による管理が必要な場合。
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
ADHDの特性を持つ患者様が在宅療養を送る際、ご本人やご家族は以下のような不安や課題に直面することが多くあります。
- 服薬の不規則化:薬を飲み忘れて症状が不安定になったり、逆に飲みすぎてしまったりする不安がある。
- 生活リズムの昼夜逆転:過集中や衝動性により、睡眠時間が不規則になり、昼夜逆転の生活が続いてしまう。
- 「ゴミ屋敷」化や衛生環境の悪化:片付けが苦手なため、部屋がゴミで溢れ、衛生的な生活環境を維持できず、身体的な健康被害(皮膚疾患や呼吸器疾患など)が心配される。
- ご家族の疲弊と孤立:衝動的な言動や行動に対してご家族が常に対応を迫られ、精神的に追い詰められてしまう(カサンドラ症候群など)。
- 二次障害の悪化:「できないこと」への自己嫌悪から、うつ病や適応障害などの精神疾患が悪化してしまう不安。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、ADHDの患者様が安心してご自宅で過ごせるよう、以下のような専門的な医療ケアとサポートを提供します。
- ご自宅での継続的な薬物療法と調整:患者様の生活環境を直接拝見しながら、効果と副作用を確認し、最適な処方調整を行います。ご自宅でリラックスした状態で診察を行うため、より本音に近いお話を伺うことが可能です。
- 生活環境に合わせた服薬管理の工夫:単に薬を処方するだけでなく、「目につく場所に置く」「カレンダーを活用する」など、患者様の動線に合わせた飲み忘れ防止の工夫を一緒に考えます。必要に応じて訪問薬剤師と連携し、一包化や服薬カレンダーの導入をサポートします。
- 生活リズムと環境調整の指導:睡眠導入のアドバイスや、日中の活動性を高めるための声かけを行います。また、片付けられない悩みに対しては、批判することなく、少しずつ環境を整えるための優先順位付けをサポートします。
- ご家族へのレスパイトとカウンセリング:ご家族の悩みをお聞きし、疾患への理解を深めるための説明や、適切な距離感の取り方をアドバイスします。介護負担を軽減するための社会資源の活用も提案します。
また、当院は24時間365日の緊急往診体制を整えています。急な精神状態の悪化や、合併する身体症状のトラブルがあった際にも、夜間・休日を問わず医師が対応いたしますので、安心して在宅生活を続けていただけます。
在宅療養を始めるためのサポート体制
ADHDを持つ患者様の在宅療養には、医療だけでなく福祉や介護との連携が不可欠です。当院では、地域の基幹病院や精神科専門病院との連携体制を構築しており、入院が必要と判断された際のスムーズな紹介が可能です。
また、日常生活を支えるためには、ケアマネジャーや訪問看護ステーションとの密な連携が重要です。特に訪問看護師は、服薬確認や生活スキルの維持・向上のために頻繁に訪問し、患者様の「伴走者」として大きな役割を果たします。
介護保険をお持ちの方に対しては、「居宅療養管理指導」というサービスを通じて、医師や薬剤師がケアマネジャーに医学的な観点からケアプランのアドバイスを行います。これにより、医療と介護が一体となった切れ目のない支援体制を構築し、患者様らしい生活を支えます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
外来でのご相談をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- 予約・受付:お待たせしないよう、お電話等で事前にご予約の上、ご来院ください。
- 問診・相談:現在の病状、通院に関するお悩み、ご家族の介護状況などをお伺いします。
- 方針検討:訪問診療に移行した場合の具体的なメリット・デメリットをご説明し、患者様にとって最適な治療方針を医師と一緒に検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
訪問診療をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- お問い合わせ:お電話またはHPの問い合わせフォームよりご連絡ください。
- 事前面談・相談:相談員(または医師・看護師)が、現在の病状やご家族の状況、ご要望を詳しく伺います。
- 診療開始:契約手続き完了後、初回訪問の日程を調整し、定期的な訪問診療を開始します。
注意欠如・多動症(ADHD)による自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
「通院が続けられない」「家から出るのが怖い」「薬の管理ができず体調を崩してしまう」。そうしたお悩みは、決して患者様やご家族の努力不足ではありません。ADHDという特性に合わせて、医療の形を変えることで解決できる課題がたくさんあります。
当院は、患者様が住み慣れた場所で、自分らしく穏やかに過ごせるよう全力でサポートいたします。無理をして通院を続けるのではなく、医療者が患者様のもとへ伺うという選択肢があります。まずは一度、私たちにご相談ください。

