ALSなど神経難病
ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病と診断されたとき、患者様ご本人はもちろん、ご家族が抱える不安は計り知れません。病状の進行に伴い、今まで当たり前にできていたことが少しずつ難しくなる中で、「住み慣れた自宅で、いつまで過ごせるのだろうか」という切実な悩みに直面されていることと思います。
私たちは、そうした不安に寄り添い、医療機器の管理や日々のケアを通じて、患者様が少しでも自分らしく、穏やかな時間を過ごせるようサポートする「訪問診療(在宅医療)」を行っています。通院が困難になってからではなく、これからの療養生活を見据えた早い段階からのご相談も大切にしています。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。どうぞお一人で抱え込まず、私たちにお話しください。
疾患と訪問診療の対象
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは
ALSは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんと痩せて力がなくなっていく疾患です。感覚や知能、視力や聴力などは保たれることが多いため、身体の自由が利かなくなることへの精神的な苦痛も伴います。
病状が進行すると、自力での移動が困難になるだけでなく、呼吸機能の低下や飲み込みの障害(嚥下障害)が生じます。そのため、頻繁な通院が身体にとって大きな負担となったり、人工呼吸器などの医療機器の管理が必要となったりすることから、自宅で医師や看護師の定期的なケアを受ける「訪問診療」が必要となるケースが多くあります。
訪問診療の対象となる方
主に以下のような状況にある患者様が、当院の訪問診療の対象となります。
- 筋力の低下により、外来への通院に強い疲労や困難を感じている方
- 人工呼吸器(侵襲的・非侵襲的)や在宅酸素療法などの管理が必要な方
- 胃ろう(PEG)などの経管栄養や、定期的な吸引処置が必要な方
- コミュニケーションの障害があり、きめ細やかな意思疎通のサポートが必要な方
- 最期まで住み慣れた自宅や施設で過ごしたい、自宅での看取りを希望される方
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
ALSなどの神経難病を抱えながら自宅で過ごす際、患者様とご家族は多くの不安や困りごとに直面します。
- 呼吸への不安: 息苦しさが強くなった時や、痰(たん)が自力で出せなくなった時の対応への恐怖。
- 食事と栄養の悩み: 飲み込みが悪くなり、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こさないか、十分な栄養が摂れているかという心配。
- 介護負担の増大: 24時間の見守りや体位変換、排泄介助など、ご家族にかかる身体的・精神的な負担。
- 緊急時の対応: 夜間や休日に容体が急変した際、どうすれば良いか分からないという不安。
- 意思伝達の困難: 言葉が話しにくくなり、自分の希望や身体の不調を伝えられなくなることへの焦り。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、神経難病特有のこうした不安を解消し、安全に在宅療養を継続できるよう、専門的な医療処置と管理を提供しています。
- 高度な呼吸管理: 人工呼吸器(NPPV、TPPV)の設定・管理、気管カニューレの交換や管理を自宅で行います。
- 排痰ケア・吸引指導: 呼吸苦を和らげるための排痰補助装置(カフアシスト等)の導入検討や、ご家族への吸引指導を行います。
- 栄養管理のサポート: 胃ろうや腸ろうの管理、中心静脈栄養(ポート)の管理など、病状に合わせた栄養摂取を支えます。
- 症状緩和(パリアティブケア): 痛みや呼吸困難感、不安感などの苦痛を和らげるための薬物療法やケアを積極的に行います。
- 意思伝達の支援: 文字盤や意思伝達装置の導入に関しても、専門職と連携しながらサポートします。
そして何より、当院には「24時間365日の緊急往診体制」があります。夜間・休日を問わず、いつでも連絡がつき、必要に応じて医師や看護師が駆けつける体制を整えていますので、安心して自宅での生活をお送りください。
在宅療養を始めるためのサポート体制
ALSなどの神経難病の在宅療養は、医療だけで完結するものではありません。当院は、地域の基幹病院や神経内科の専門医と密に連携を取りながら、日々の診療にあたります。
また、患者様の生活を支えるためには、ケアマネジャーや訪問看護ステーション、ヘルパー、リハビリテーション職など、多職種とのチームワークが不可欠です。当院が中心となってこれらの事業所と情報を共有し、チーム全体で患者様を支えます。
さらに、介護保険サービスの一つである「居宅療養管理指導」を活用し、医師や薬剤師などが定期的にご自宅を訪問して、療養上の管理や指導を行います。医療と介護が一体となって切れ目のないサービスを提供することで、ご家族の介護負担を軽減し、持続可能な在宅療養環境を整えていきます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
外来でのご相談をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- 予約・受付: お待たせしないよう、お電話等で事前にご予約の上、ご来院ください。
- 問診・相談: 現在の病状、通院に関するお悩み、ご家族の介護状況などをお伺いします。
- 方針検討: 訪問診療に移行した場合の具体的なメリット・デメリットをご説明し、患者様にとって最適な治療方針を医師と一緒に検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
訪問診療をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- お問い合わせ:お電話または当院ホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。現在の状況やご希望をお伺いします。
- 事前面談・ご説明:相談員(ソーシャルワーカー)または医師が、患者様・ご家族と面談を行います。訪問診療の仕組みや費用、緊急時の対応について詳しくご説明し、ご同意いただければ契約となります。入院中の場合は、病院へ伺っての面談も可能です。
- 訪問診療の開始:患者様の病状や生活リズムに合わせて訪問スケジュールを決定し、定期的な診療を開始します。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)による自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
「進行していく病状が怖い」「自宅で呼吸器をつけて生活できるのか」といった切実な悩みを、どうか一人で抱え込まないでください。ALSなどの神経難病であっても、適切な医療的サポートと地域の支えがあれば、住み慣れたご自宅で、ご家族と共に穏やかな時間を過ごすことは可能です。
私たちは、患者様が「自分らしく生きる」ことを最優先に考え、24時間365日体制でその生活を支え続けます。まずは、今の不安なお気持ちを私たちにお聞かせください。患者様とご家族にとって最善の療養生活を、一緒に考えていきましょう。

