認知症(行動・心理症状ふくむ)
ご家族の様子が以前と違う、物忘れが進んでいる、あるいは感情のコントロールが難しくなっているといった変化に戸惑っていませんか?認知症は、ご本人だけでなく、介護をされるご家族にとっても大きな不安と負担をもたらします。特に、通院を嫌がる、待合室で待てないといった事情から、適切な医療を受ける機会を逃してしまうケースも少なくありません。
私たち在宅医療の専門チームは、住み慣れたご自宅での生活を支えるため、患者様とご家族に寄り添った訪問診療を行っています。認知症の進行に伴う様々な変化に対しても、医学的なアプローチと生活環境の調整を通じて、穏やかな時間を過ごせるようサポートいたします。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。
認知症(行動・心理症状ふくむ)と訪問診療の対象
認知症(行動・心理症状ふくむ)とは
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。記憶障害などの「中核症状」に加え、暴言や暴力、徘徊、拒絶、うつ状態といった「行動・心理症状(BPSD)」が現れることがあります。
初期段階では外来通院が可能でも、症状が進行したりBPSDが強く現れたりすると、外出そのものが困難になります。訪問診療が必要になるのは、通院のための移動が身体的・精神的に大きな負担となる場合や、環境の変化による混乱を避ける必要がある場合など、ご自宅での安定した療養生活を守るために医療の介入が不可欠な状態です。
訪問診療の対象となる方
認知症の診断を受けており、以下のような状況にある方が主な対象となります。
- 認知機能の低下により、一人での通院が困難、または付き添いがあっても通院が著しく困難な方
- 病院やクリニックの待合室でじっとしていることができず、通院が大きなストレスになっている方
- 「病院には行かない」と強い拒否があり、必要な治療が中断してしまっている方
- 徘徊や昼夜逆転、暴言・暴力などの症状があり、自宅での専門的な管理やケアが必要な方
- 身体的な合併症(誤嚥性肺炎や褥瘡など)があり、定期的な医療処置が必要な方
- 住み慣れた自宅で最期まで過ごしたいと希望されている方(お看取り)
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
認知症の患者様を自宅で介護するご家族は、日々多くの不安や課題に直面されています。
- 服薬管理ができない: 薬を飲み忘れる、過剰に飲んでしまう、あるいは薬を飲むことを拒否するため、症状のコントロールができない。
- 周辺症状(BPSD)への対応: 大声を出したり、暴力を振るったりするため、介護者が疲弊してしまう。
- 徘徊や外出のリスク: 目を離した隙に外に出てしまい、事故や行方不明になる心配が絶えない。
- 食事や水分摂取のムラ: 食事を認識できない、または拒食・過食があり、栄養状態が悪化している。
- 睡眠障害: 昼夜逆転しており、夜間の介護が必要で家族が十分に休めない。
- 身体合併症の発見遅れ: 本人が痛みを訴えられないため、他の病気や怪我に気づくのが遅れてしまう不安。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、認知症の特性を深く理解した医師とスタッフが、ご自宅での療養生活を包括的にサポートします。
- BPSD(行動・心理症状)のコントロール: 患者様の不安や興奮の原因を探り、環境調整のアドバイスを行うとともに、必要に応じて適切な薬剤調整を行い、穏やかに過ごせるよう支援します。
- 適切な服薬管理: 飲みやすい剤形への変更や、訪問薬剤師・訪問看護師と連携した服薬カレンダーの活用など、確実に服薬できる体制を整えます。
- 全身状態の管理と合併症治療: 定期的な診察により、便秘、脱水、感染症、皮膚トラブル(褥瘡)などの身体的な問題を早期に発見し、自宅で治療を行います。
- 介護者へのサポート: ご家族の介護負担を軽減するため、接し方のアドバイスや、レスパイトケア(介護者の休息)のための入院調整の相談にも応じます。
- 栄養管理: 食事が摂れない場合の点滴管理や、経管栄養(胃ろうなど)の管理も行います。
また、当院では24時間365日の緊急往診体制を整えております。夜間の急な体調変化や、不穏状態が強く家族だけでは対応できない場合でも、いつでも医師や看護師に連絡が取れ、必要に応じて往診対応が可能です。
在宅療養を始めるためのサポート体制
認知症の在宅療養は、医療だけで完結するものではありません。当院では、これまで通院されていた病院の主治医と連携し、診療情報提供書を通じてスムーズに引き継ぎを行います。
また、日々の生活を支えるケアマネジャーや訪問看護ステーション、ヘルパーなどの介護サービス事業所と密に連携をとります。特に、介護保険制度における「居宅療養管理指導」を活用し、医師や薬剤師がケアマネジャーに必要な医学的情報を提供することで、医療と介護が一体となったケアプランの作成を支援します。患者様とご家族が孤立することなく、チーム全体で支える体制を構築します。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
外来でのご相談をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- ご予約・受付: お電話にて外来相談の予約をお取りください。
- 医師との面談: 現在の病状や介護状況、ご不安な点をお伺いします。
- 方針の検討: 訪問診療が適しているか、外来通院を継続すべきかなど、最適な治療方針をご提案します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
訪問診療をご希望される場合の基本的な流れは以下の通りです。
- お問い合わせ: お電話またはホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
- 事前面談・ご説明: 相談員(看護師やソーシャルワーカー)が、現在の状況やご希望を詳しく伺い、訪問診療の仕組みや費用についてご説明します。
- 診療開始: 契約手続き完了後、初回訪問の日程を決定し、医師と看護師がご自宅へ伺い診療を開始します。
認知症(行動・心理症状ふくむ)による自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
認知症の介護は、先が見えない不安や、日々変化する症状への対応で、心身ともに大きな負担がかかるものです。しかし、適切な医療サポートと環境調整があれば、ご自宅でも穏やかな時間を過ごすことは可能です。
通院が難しい、薬を飲んでくれない、夜間の対応が不安など、認知症の在宅療養でお困りのことがあれば、まず当院へご相談ください。私たちは、患者様ご本人の尊厳を守り、そして何より、支えるご家族の生活を守るためのパートナーとして全力でサポートいたします。

