乳がん
乳がんの治療を長く続けてこられた中で、抗がん剤治療の副作用による辛さや、進行による痛み、そして通院に伴う身体的・精神的な負担を感じてはいらっしゃいませんか?「住み慣れた自宅で、家族と一緒に穏やかな時間を過ごしたい」という想いは、決してわがままではありません。在宅医療という選択肢は、その想いを叶え、患者様ご自身らしい生活を支えるためのものです。
私たちは、乳がんという疾患の特性を深く理解し、身体的な苦痛の緩和だけでなく、心のケアも大切にした訪問診療を行っています。ご自宅での療養生活が少しでも安らかで、笑顔のあるものになるよう、私たちが全力でサポートいたします。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。
疾患と訪問診療の対象
乳がんとは
乳がんは、乳房にある乳腺(乳管や小葉)に発生する悪性腫瘍です。初期段階では適切な治療により予後が良いケースも多いですが、進行すると骨、肺、肝臓、脳などへの転移(遠隔転移)が生じることがあります。
特に、骨転移による強い痛みや、肺転移による呼吸困難、あるいは皮膚への浸潤による出血や滲出液(しんしゅつえき)の管理が必要となる場合、通院自体が大きな身体的負担となります。訪問診療では、がん自体の治療(手術や放射線など)ではなく、これらのがんに伴う苦痛を和らげる「緩和ケア」を中心に行い、生活の質(QOL)を維持することを目的とします。
訪問診療の対象となる方
具体的には、以下のような状況にある患者様が対象となります。
- 抗がん剤治療の副作用や病状の進行により体力が低下し、病院への通院が困難になってきた方
- 骨転移による疼痛が強く、動作時の痛みのコントロールが必要な方
- 皮膚転移(花咲き乳がん等)による出血や滲出液の処置、臭いのケアを自宅で継続的に行う必要がある方
- 胸水貯留による息苦しさがあり、酸素療法や胸水穿刺などの処置が必要な方
- 最期の時間を、病院ではなく住み慣れた自宅やご家族のそばで過ごしたいと希望される方(自宅での看取り)
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
乳がんの患者様がご自宅で療養される際、以下のような不安や困りごとを抱えることが多くあります。
- 痛みの管理への不安: 骨転移などによる強い痛みが、自宅の薬だけで抑えられるのか心配。
- 皮膚トラブルのケア: 腫瘍が皮膚表面に現れた場合の処置方法や、特有の臭い、衣服の汚れに対する精神的なストレス。
- 呼吸苦への対応: 肺転移や胸水による息苦しさが強まった時、自宅でどう対処すればよいか分からない。
- 急変時の対応: 夜間や休日に容態が急変した場合、誰に連絡すればよいのか、すぐに対応してもらえるのかという不安。
- リンパ浮腫の悩み: 腕のむくみ(リンパ浮腫)による重だるさや生活のしづらさ。
- ご家族の負担: 介護をする家族が、医療的なケアをどこまで担えるか、共倒れにならないかという懸念。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、乳がん特有の症状や不安に対して、以下のような専門的な医療処置とケアをご自宅で提供いたします。
- 専門的な疼痛緩和ケア(緩和ケア):内服薬だけでなく、貼付剤(張り薬)や、持続皮下注射(PCAポンプ)を用いた医療用麻薬の調整を行い、痛みを可能な限り取り除きます。患者様の意識を保ちつつ痛みを和らげる微細な調整を行います。
- 皮膚浸潤・創傷ケア:皮膚に露出した腫瘍からの出血や滲出液に対し、適切な被覆材の選定や処置を行います。臭いや衛生面での不快感を軽減し、患者様の尊厳を守るケアを徹底します。
- 呼吸器症状の管理:在宅酸素療法の導入・管理や、必要に応じた胸水のドレナージ(排液)管理を行い、呼吸の苦しさを緩和します。
- 点滴・栄養管理:食事が喉を通らない場合の点滴(水分・電解質補給)や、中心静脈栄養(CVポート)の管理に対応しています。
- 24時間365日の緊急往診体制:夜間・休日を問わず、いつでも医師や看護師と連絡が取れる体制を整えています。急な痛みの増悪や体調変化があった際には、必要に応じて緊急往診を行います。
在宅療養を始めるためのサポート体制
在宅療養は、医師だけで支えるものではありません。患者様が安心して過ごせるよう、多職種が連携したチーム医療を提供します。
まず、これまで治療を受けてこられた基幹病院(がん専門病院など)の主治医と綿密に連携し、治療経過や今後の情報を共有します。これにより、切れ目のない医療を提供することが可能です。また、日々のケアを支える「ケアマネジャー」や、こまめな訪問で生活ケアを行う「訪問看護師」とも密に連絡を取り合い、患者様の状態変化をチーム全体で把握します。
さらに、介護保険サービス(居宅療養管理指導など)を有効に活用することも重要です。医療保険と介護保険を組み合わせることで、ベッドなどの福祉用具のレンタルや、ヘルパーによる生活援助などをスムーズに導入し、ご家族の介護負担を軽減する体制を整えます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
詳細はこちらのページ
① 外来でご相談いただく場合の流れ
「まずは医師に会って話を聞きたい」という方は、外来でのご相談をご利用ください。
- ご予約・受付: お電話にて外来相談のご予約をお願いいたします。
- 医師との面談: 現在の病状、通院の悩み、在宅医療への移行に関する不安などを医師が直接伺います。
- 方針の検討: 訪問診療に移行するタイミングや、具体的なケアの内容について一緒に検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
訪問診療の利用が既に決まっている、あるいは通院が困難ですぐに始めたい場合の基本的な流れは以下の通りです。
- お問い合わせ: お電話またはホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
- 事前面談・調整: 患者様・ご家族様と面談を行い、病状やご希望を確認します(入院中の場合は病院へ伺うことも可能です)。
- 訪問診療の開始: 定期的な訪問スケジュールを決定し、診療を開始します。
乳がんによる自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
乳がんは、治療期間が長期にわたることも多く、ライフステージに応じた様々な悩みが伴います。「痛みを取り除きたい」「家族に迷惑をかけたくない」「最期まで自分らしくありたい」。そのような切実な願いに、私たちは真摯に向き合います。
ご自宅での療養には不安がつきものですが、適切な医療サポートがあれば、穏やかで安心できる時間は作れます。お一人で、あるいはご家族だけで悩まず、まずは私たちにご相談ください。あなたが望む療養生活を、私たちが全力で支えます。

