自分を責める・消えたい気持ちが続く(※緊急時は119)
「自分なんていない方がいい」「消えてしまいたい」という辛い気持ちを抱えながら、日々を過ごすのはどれほど苦しいことでしょう。誰にも相談できず、部屋に閉じこもりがちになってしまうことは、決して珍しいことではありません。また、そのような姿を見守るご家族にとっても、どう声をかけ、支えればよいのか、悩みは尽きないこととお察しします。
当院では、訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。お一人で抱え込まず、まずは私たちにその辛さをお話しください。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
「消えたい」「死にたい」という希死念慮や、自分を激しく責めてしまう自責の念は、うつ病などの精神疾患だけでなく、身体的な苦痛や環境の変化など、複合的な要因で生じることがあります。
特に、精神的な不調により外出が怖くなったり、気力が湧かずに通院が途絶えてしまったりする場合、訪問診療による継続的なケアが命綱となります。また、がん末期や神経難病など、身体的な限界からくる精神的な落ち込みに対しても、心身両面からのサポートが必要です。
以下の表は、訪問診療の対象となり得る状態と、関連する疾患のリストです。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 精神疾患による通院困難 | 意欲低下により外出できない、人目が怖く通院できない、希死念慮があり目が離せない、服薬管理ができない。 | うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害、パニック障害、社交不安障害、適応障害 |
| 若年層・発達特性の課題 | 学校や社会生活への不適応、引きこもり、ネット依存による昼夜逆転、衝動的な行動、対人関係の強い不安。 | うつ病(思春期・若年者)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、起立性調節障害(OD)、摂食障害、チック障害、ゲーム障害・インターネット依存 |
| 身体疾患に伴うメンタル不調 | 進行する病状への不安や絶望感、身体的苦痛によるうつ状態、将来への悲観、せん妄などの意識障害。 | 肺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん等の各種がん(緩和ケア・看取り)、ALS、パーキンソン病、脳卒中後遺症、慢性心不全、慢性呼吸不全 |
| 認知機能・行動面の課題 | 認知機能低下による不安・抑うつ、感情のコントロール不全、徘徊や興奮などの行動・心理症状(BPSD)。 | 認知症(アルツハイマー型、レビー小体型等)、脳血管性認知症 |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
「消えたい」という気持ちが強い状態では、まずは心の安定を図り、焦燥感や不眠を取り除くための薬物療法や環境調整が中心となります。医師や看護師が定期的にご自宅へ伺い、対話を通じて患者様の孤立感を和らげるとともに、内服状況の確認や副作用のチェックを行います。無理に励ますのではなく、患者様のペースに合わせた診療を行います。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
- 問診・精神状態の観察:睡眠状況、食欲、気分の波などを丁寧に伺い、病状の変化を把握します。
- 身体診察・バイタル測定:血圧、脈拍、体温などの基本測定に加え、身体的な不調が精神面に影響していないかを確認します。
- 血液検査・尿検査:お薬の血中濃度の確認や、脱水、栄養状態、内臓機能の評価のために実施します。
- 処方・薬剤管理:症状に合わせたお薬の調整や、飲み忘れ防止のための服薬カレンダー等を用いた管理指導を行います。
在宅療養を始めるためのサポート体制
心のケアが必要な在宅療養では、医師だけでなく、多職種によるチームでのサポートが不可欠です。
当院では、地域の精神科病院や基幹病院と連携し、入院が必要な事態に備えた体制を整えています。また、日々の生活を支えるケアマネジャーや、こまめな訪問が可能な訪問看護ステーションとも密に連携します。
特に、介護保険サービスにおける「居宅療養管理指導」を活用することで、医師や薬剤師などが定期的に訪問し、療養上の管理や指導を行うことが可能です。これにより、医療と介護が一体となって患者様の生活環境を整え、ご家族の負担も軽減できる体制を構築します。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
メンタルヘルスの不調、特に希死念慮を伴う状態においては、治療の中断や孤立が最もリスクを高めます。訪問診療を導入することで、以下のメリットが期待できます。
1. 治療の継続性と重症化の予防
気力の低下で通院ができなくなると、お薬が切れ、症状が一気に悪化するリスクがあります。訪問診療では医師が定期的に訪問するため、治療が途切れることがありません。また、小さな変化を早期に発見し、入院が必要になる手前で対応策を講じることが可能です。
2. 安心できる環境での診療
待合室での他人の視線や、通院のための移動は、精神的に不安定な方にとって大きなストレスです。住み慣れたご自宅で、リラックスした状態で診察を受けることで、本音を話しやすくなり、より適切な治療方針を立てることができます。
3. ご家族へのケアとサポート
患者様を支えるご家族もまた、大きな不安を抱えています。訪問診療では、ご家族からの相談にも応じ、接し方のアドバイスやレスパイト(休息)のためのサービス調整などを行います。家族全体をチームで支えることで、共倒れを防ぎます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
自分を責める・消えたい気持ちでお悩みなら、まずご相談ください
「消えてしまいたい」と思うほど辛い時は、どうかご自分だけで判断せず、私たちに頼ってください。心が風邪をひいている時、無理に動く必要はありません。私たちがご自宅へ伺い、医療の力で心の回復をお手伝いします。
ご本人様はもちろん、支えているご家族の方も、まずは一度、当院までご相談ください。一緒に解決の糸口を見つけましょう。

