いらだち・怒りっぽさ・衝動性が目立つ
「以前より怒りっぽくなった」「些細なことで大声を出す」「衝動的な行動が抑えられない」。ご家族の性格が変わってしまったかのような振る舞いに、日々戸惑い、精神的な疲弊を感じていらっしゃることと思います。これらは性格の問題ではなく、病気の症状である場合が少なくありません。
ご本人が受診を拒否して困っている、あるいは通院の負担を減らしたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。HPからのお問い合わせの他、直接医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
いらだちや衝動性が高まっている状態では、ご本人が自身の不調を自覚しにくく、医療機関への受診を頑なに拒否するケースが多々あります。無理に連れ出そうとすれば、さらに興奮し、ご家族との関係が悪化することさえあります。また、待合室で静かに待つことができない、医師や看護師に対して攻撃的な態度をとってしまうなど、通院そのものが困難になることも珍しくありません。
訪問診療であれば、住み慣れたご自宅というリラックスできる環境で、医師が診察を行います。「病院に行かなくて済む」という安心感が、ご本人の興奮を和らげる第一歩となることもあります。以下のような状況が見られる場合は、訪問診療の導入をご検討ください。
- 些細なことで激高する:以前は穏やかだったのに、急に怒鳴ったり、物を投げたりする。
- 受診の拒否:「自分は病気ではない」と言い張り、病院へ行こうとすると暴れる。
- 衝動的な買い物や行動:後先を考えずに高額な買い物をしたり、突然外へ飛び出したりする。
- 感情のコントロール不能:泣き叫んだり、パニックになったりする状態が頻繁にある。
- 他害・自傷の恐れ:家族に手を上げたり、自分を傷つけるような行動が見られる。
これらの症状は、認知症や精神疾患、発達障害など、多様な疾患が背景にある可能性があります。当院では、以下の関連疾患に対応しております。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 認知症・脳血管疾患 | 物忘れに伴う怒り、感情失禁、性格変化 | 認知症(行動・心理症状ふくむ)、脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群 |
| 精神疾患(成人) | 幻覚・妄想による興奮、気分の波、意欲低下 | 統合失調症、うつ病、双極性障害、適応障害、不安障害/パニック障害、社交不安障害 |
| 児童・思春期・発達障害 | かんしゃく、多動・衝動性、こだわり、依存 | 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、うつ病(思春期・若年者)、チック障害/トゥレット症候群、起立性調節障害(OD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、ゲーム障害・インターネット依存(依存症) |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
いらだちや衝動性の背景にある疾患に対し、薬物療法を中心としたコントロールを行います。ご本人が服薬を拒否される場合でも、注射剤の活用や、食事に混ぜられる薬剤の検討など、在宅ならではの柔軟な対応が可能です。また、ご家族への接し方のアドバイスや、生活環境の調整を通じて、症状の鎮静化を図ります。身体的な不調が精神的不穏の原因となっている場合もあるため、全身状態の管理も行います。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
- バイタルチェック:血圧、脈拍、体温、酸素飽和度(SpO2)の測定による全身状態の把握。
- 血液検査・尿検査:薬の血中濃度の確認や、身体的な異常(感染症、脱水、貧血など)の有無を調べるための採血・採尿。
- 処方・薬剤管理:症状に合わせた処方箋の発行、および薬剤師と連携した服薬管理(カレンダーセット等)。
- 身体診察:聴診、触診、視診による全身のフィジカルアセスメント。
在宅療養を始めるためのサポート体制
精神的な不安定さを抱える在宅療養では、医療と介護、そして福祉の連携が不可欠です。当院は、地域の基幹病院や精神科専門病院と連携し、入院治療が必要となった際のスムーズな紹介体制を整えています。
また、日々の生活を支えるケアマネジャーや、服薬確認・生活指導を行う訪問看護ステーションとも密に情報を共有します。介護保険サービスにおける**「居宅療養管理指導」**を活用し、医師や薬剤師が専門的な視点から療養上の指導・助言を行うことで、医療と介護が一体となった包括的なサポートを提供します。ご家族だけで抱え込まず、チームで支える体制を作ります。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
1. 生活環境に即した治療調整による症状の安定
診察室だけの姿ではなく、実際の生活環境やご家族との関わりを医師が直接見ることで、いらだちの「引き金(トリガー)」となっている原因を発見しやすくなります。生活リズムや環境因子の調整と、きめ細やかな薬物療法を組み合わせることで、より効果的に症状を安定させ、重症化を防ぐことができます。
2. ご家族の精神的・身体的負担の軽減
「いつ怒り出すかわからない」という緊張感は、ご家族にとって計り知れないストレスです。訪問診療により、定期的に医療者が介入することで、ご家族の悩みや不安を相談できる場が確保されます。緊急時の連絡体制があるという安心感は、介護疲れによる共倒れを防ぎ、ご家族自身のQOL(生活の質)を守ることにもつながります。
3. 未治療・治療中断による入院リスクの回避
受診拒否により治療が中断してしまうと、症状が悪化し、最終的には警察沙汰や強制的な入院(措置入院など)に至るケースがあります。早期に訪問診療で介入し、適切な医療とのつながりを維持することで、地域での穏やかな生活を継続できる可能性が高まります。最悪の事態を避けるためにも、早めの検討が重要です。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付;電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談;医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討;診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話);現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認);訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始;診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
いらだち・怒りっぽさ・衝動性が目立つでお悩みなら、まずご相談ください
「怒りっぽくなったのは歳のせい」「性格だから仕方ない」と諦めたり、ご家族だけで耐え続けたりする必要はありません。その症状の裏には、適切な医療で改善できる原因が隠れているかもしれません。
私たちは、患者様ご本人の苦しみはもちろん、それを支えるご家族の負担も軽減したいと強く願っています。平穏な日常を取り戻すために、まずは一度、私たちにご相談ください。あなたが抱えるその悩みを、一緒に解決していきましょう。

