人と会うのがつらい/家族以外と話せない
「外に出るのが怖い」「人と顔を合わせると動悸がする」「家族以外とは話せず、自室にこもりがちになっている」。こうしたお悩みは、決して甘えや性格の問題ではありません。心や体に大きな負担がかかっているサインであり、適切なサポートが必要です。しかし、その「病院に行くこと」自体が大きなハードルとなっている方も少なくありません。
当院では、通院が困難な方のために、医師が自宅へ伺う訪問診療を行っています。住み慣れた環境で、少しずつ社会や医療とのつながりを取り戻すお手伝いをします。まずはHPからのお問い合わせのほか、ご家族による外来での事前相談や、「医師と直接話してみたい」という方へ向けた外来相談も承っております。無理のない範囲で、最初の一歩をご検討ください。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
「人と会うのがつらい」という状態の背景には、さまざまな疾患や障害が隠れていることがあります。不安や緊張が強く外出ができない、意欲が低下して身の回りのことができない、あるいは身体的な事情で通院が困難であるなど、理由は人それぞれです。
以下のような状態や疾患に当てはまる場合は、無理に通院しようとせず、訪問診療の利用をご検討ください。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 心の不調・精神疾患 | 人前での極度の緊張、パニック発作、気分の落ち込み、幻聴・妄想、外出への恐怖心 | うつ病、統合失調症、不安障害/パニック障害、社交不安障害、適応障害、強迫性障害 |
| 児童・思春期の課題 | 起き上がれない、学校に行けない、ゲームやネットへの没頭、極端な痩せ・過食、チック症状 | 起立性調節障害(OD)、うつ病(思春期・若年者)、ゲーム障害・インターネット依存(依存症)、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、チック障害/トゥレット症候群 |
| 発達・行動の特性 | こだわりが強い、対人コミュニケーションが苦手、落ち着きがない、感覚過敏 | 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD) |
| 認知症・神経難病 | 物忘れ、徘徊、認知機能の低下による対人トラブル、身体の動かしにくさ、嚥下困難 | 認知症(行動・心理症状ふくむ)、脳卒中後遺症、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病 |
| 慢性疾患・身体管理 | 息切れで動けない、心不全や腎臓病での全身管理、インスリン注射やカテーテル管理が必要 | 慢性呼吸不全/COPD、気管支喘息、慢性心不全、心房細動、高血圧・脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、肝硬変・腹水管理、留置カテーテル・膀胱瘻・ストーマ管理、胃ろう・経管栄養、中心静脈栄養 |
| がん・緩和ケア | 通院による体力消耗が著しい、最期まで自宅で過ごしたい、痛みのコントロールが必要 | 肺がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
「人と会うのがつらい」と感じている方にとって、自宅は最も安心できる場所です。当院の訪問診療では、その安心感を守りながら、精神的なケアと身体的な健康管理の両面からアプローチします。無理な処置は行わず、患者様のペースに合わせた診療を心がけています。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
医師が定期的に訪問し、心身の状態を確認します。対話を通じたカウンセリング的な関わりや、必要に応じたお薬の調整(内服・注射など)を行います。また、身体的な不調がある場合には、聴診、血圧測定、血液検査、尿検査など、基本的な診察はすべて自宅で完結できます。外に出るストレスを感じることなく、適切な医療を受けることが可能です。
在宅療養を始めるためのサポート体制
在宅療養は、医師だけで支えるものではありません。ご本人が安心して生活できるよう、地域の訪問看護ステーションやケアマネジャーと密に連携し、チームでサポートします。
また、介護保険サービスの一つである居宅療養管理指導を活用することで、医師や薬剤師が療養上の専門的なアドバイスを行い、医療と介護が一体となったケアを提供します。必要に応じて基幹病院とも連携し、緊急時のバックアップ体制も整えます。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
1. 治療の中断を防ぎ、重症化を予防する
「通院がつらい」という理由で受診を自己判断でやめてしまうと、症状が悪化し、より社会復帰が難しくなる悪循環に陥ります。訪問診療により、自宅にいながら継続的な治療を受けることで、症状の安定を図り、将来的な重症化や入院のリスクを減らすことができます。
2. ストレスのない環境で本音を話しやすい
待合室での他人の視線や、診察室の緊張感から解放された自宅というプライベートな空間では、リラックスして医師と話すことができます。緊張が解けることで、本来の症状や悩みを伝えやすくなり、より適切な診断と治療方針の決定につながります。
3. ご家族の負担軽減と安心感
患者様ご本人が通院を拒否される場合、説得して連れ出すご家族の精神的・肉体的な負担は計り知れません。訪問診療では医師が赴くため、通院介助の必要がなくなり、ご家族も専門家に相談できることで孤立感を解消できます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
人と会うのがつらい/家族以外と話せないでお悩みなら、まずご相談ください
社会との接点が薄れ、誰にも相談できない時間は、ご本人にとってもご家族にとっても長く苦しいものです。しかし、医療の手が届けば、その状況は少しずつ変えていくことができます。
私たちは「外に出られないこと」を責めたりはしません。あなたのペースで、安心して過ごせる場所から治療を始めましょう。まずは一度、私たちにご相談ください。

