学校・外出への強い不安(人前がこわい)
「学校に行こうとするとお腹が痛くなる」「人の視線が怖くて外に出られない」「部屋に閉じこもって誰とも会いたくない」。ご本人が抱える不安や恐怖心は、周囲が想像する以上に深く切実なものです。また、どう接してよいか分からず、日々悩み続けているご家族の負担も計り知れません。
無理に通院を促すことが逆効果になることもあります。まずはご自宅という「安全な場所」で、医療スタッフと一緒に心のケアを始めませんか?
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
「学校・外出への強い不安」や「人前がこわい」といった悩みは、性格の問題ではなく、適切な医療的ケアが必要な状態であるケースが少なくありません。特に以下のような状態が見られる場合、通院自体が大きなハードルとなり、治療が遅れてしまう可能性があります。訪問診療(在宅医療)であれば、医師が自宅へ伺うため、他人の目に触れることなく診察を受けることが可能です。
- 外出への激しい抵抗感: 玄関を出ようとすると動悸、発汗、震えなどが止まらなくなる。
- 対人恐怖・視線恐怖: 知り合いや他人の視線が極度に気になり、公共交通機関や待合室にいられない。
- 身体症状の出現: 学校や職場に行こうとすると、激しい腹痛、頭痛、吐き気、めまいが起きる(起立性調節障害など)。
- 生活リズムの乱れ・引きこもり: 昼夜逆転し、自室から出ず、家族とも顔を合わせようとしない。
- 社会機能の低下: 不登校や出社拒否が長期化し、学業や仕事に著しい支障が出ている。
- 依存行動: 不安を紛らわせるために、インターネットやゲームに過度に没頭している。
このような状態の背景には、様々な疾患や特性が隠れている場合があります。訪問診療で対応可能な関連疾患を以下に整理します。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 不安・恐怖に関連する疾患 | 人前で話すことへの極度の緊張、パニック発作(動悸・過呼吸)、予期不安による外出回避、特定の場面での強い恐怖感。 | 社交不安障害、不安障害/パニック障害、強迫性障害など |
| 気分・適応に関連する疾患 | 抑うつ気分、意欲の低下、不眠、食欲不振、環境の変化に伴うストレス反応、自傷行為、希死念慮。 | うつ病(思春期・若年者)、うつ病、適応障害、双極性障害など |
| 発達・行動特性に関連する疾患 | こだわりの強さ、対人コミュニケーションの苦手さ、不注意や多動による生活困難、感覚過敏、チック症状。 | 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、チック障害/トゥレット症候群 |
| 身体症状・自律神経に関連する疾患 | 朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感、食事摂取の拒否や過食、極端な痩せ・肥満。 | 起立性調節障害(OD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症) |
| 依存・その他の精神疾患 | ゲームやネット利用のコントロール不可、幻聴や妄想による引きこもり、現実検討能力の低下。 | ゲーム障害・インターネット依存(依存症)、統合失調症 |
| 身体的ケアを要する疾患(参考) | 慢性的な呼吸不全や神経難病などにより、外出が身体的に困難で、二次的に不安やうつ状態を併発している場合。 | 慢性呼吸不全/COPD、ALSなど神経難病、脳卒中後遺症など |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
当院の訪問診療では、精神科・心療内科領域のケアを中心に、身体的な不調も含めた包括的なサポートを行います。「人前がこわい」という症状に特化し、ご本人のペースを最優先にした関わりを大切にしています。
- 精神療法・カウンセリング的アプローチ: 医師や看護師が対話を通じ、不安の原因や思考の癖を整理し、自己肯定感の回復を支援します。
- 薬物療法(処方・調整): 抗不安薬や抗うつ薬、睡眠調整薬などの処方を行います。副作用の確認や服薬管理も自宅で行います。
- 生活リズムの調整・環境調整: 昼夜逆転の改善や、安心して過ごせる居場所作りのための助言、ご家族への接し方のアドバイスを行います。
- 身体合併症のケア: 摂食障害による栄養状態の悪化や、引きこもりに伴う体力低下などの身体的問題にも対応します。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
訪問診療では、病院の外来とほぼ同等の基本的な診察や検査を自宅で受けることができます。
- 問診・バイタルチェック: 血圧、脈拍、体温、酸素飽和度の測定および心身の状態確認。
- 血液検査・尿検査: 全身状態の把握や薬の血中濃度確認のための採血・検尿。
- 処方箋の発行: 院外処方箋を発行し、薬局からの薬剤配送の手配も可能。
- 各種書類作成: 診断書、自立支援医療意見書、精神障害者保健福祉手帳用診断書などの作成。
在宅療養を始めるためのサポート体制
学校や社会への復帰、あるいは自分らしい生活を取り戻すためには、医療だけでなく福祉や介護の視点も重要です。当院では、地域の関係機関と密に連携を取りながら患者様を支えます。
必要に応じて、精神科訪問看護ステーションと連携し、看護師による定期的な訪問で日々のメンタルケアや服薬確認を行います。また、介護保険サービスを利用される方には、医師がケアマネジャー等へ情報提供を行う「居宅療養管理指導」を実施し、医療と介護が一体となった支援体制を構築します。学校や職場、行政の相談窓口とも連携し、社会復帰へ向けた環境整備をお手伝いします。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
外出や対人関係に強い不安を感じている場合、無理をして通院を続けるよりも、一時的に在宅医療に切り替えることが回復への近道となることがあります。
1. 精神的な負担を減らし、治療を継続できる
「通院しなければならない」というプレッシャー自体が症状を悪化させることがあります。他人の視線を気にせず、住み慣れた自宅で診察を受けることで、過度な緊張が和らぎ、本音で医師に相談しやすくなります。治療の中断を防ぎ、安定した療養生活を送ることができます。
2. 重症化や引きこもりの長期化を防ぐ
「様子を見よう」と医療につながらない期間が長引くと、不登校や引きこもりが固定化し、社会復帰が難しくなるリスクがあります。早期に専門医が介入することで、適切な診断と治療方針が定まり、症状の慢性化や二次的なうつ状態(二次障害)の予防につながります。
3. ご家族の不安解消と適切なサポート
ご家族だけで問題を抱え込むと、親子関係や夫婦関係が悪化してしまうことがあります。第三者である医療職が間に入ることで、ご家族も専門的なアドバイスを受けることができ、冷静に患者様と向き合えるようになります。家族全体のQOL(生活の質)向上にも寄与します。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
学校・外出への強い不安でお悩みなら、まずご相談ください
「人前がこわい」「外に出られない」という悩みは、決して甘えや怠けではありません。誰にでも起こりうる心の病や特性によるものです。ご自宅でゆっくりと心を休めながら、少しずつ元気を取り戻していくための選択肢として、訪問診療があります。私たち医療チームが、あなたのペースに合わせて寄り添います。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

