服薬管理がむずかしい(飲み忘れ・多剤内服)
「お薬、飲みましたか?」という毎日の声かけが、患者様ご本人にとっても、支えるご家族にとっても大きなストレスになっていませんか。薬の飲み忘れや、複数の医療機関から処方された大量の薬(多剤内服)の管理は、在宅生活を続ける上で非常に重要な課題です。
当院では、訪問診療のご相談はHPからのお問い合わせの他、直接医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。お一人で抱え込まず、まずはそのお悩みをお聞かせください。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
服薬管理が難しくなる背景には、認知機能の低下や身体機能の衰え、または精神的な不調など、様々な要因が隠れています。薬が正しく飲めていない状態が続くと、原疾患の悪化や予期せぬ副作用を招く恐れがあります。
以下のような疾患や状態にある方は、医師や薬剤師による専門的な介入が必要なタイミングかもしれません。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 認知機能・精神症状による管理困難 | 服薬の意味が理解できない、飲んだことを忘れる、拒薬がある、意欲低下による飲み忘れ | 認知症(行動・心理症状ふくむ)、うつ病、統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD) |
| 慢性疾患による多剤服用・複雑な管理 | 複数の持病があり薬の種類が極端に多い、インスリン注射や厳密な血糖管理が必要、心不全や腎不全での細かい用量調整が必要 | 糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理 |
| 身体機能低下・嚥下障害 | 薬のシートが開けられない、錠剤が飲み込めない(ムセる)、麻痺により自身で薬を準備できない | 脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病、誤嚥性肺炎をくり返す、関節リウマチなどの運動器疾患 |
| がん・緩和ケアに伴う鎮痛管理 | 痛みのコントロールのための麻薬管理が必要、症状変化に応じた頻繁な薬剤調整が必要 | 肺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、その他全般の悪性腫瘍(緩和ケア・看取り) |
| 経管栄養・特殊な投与経路 | 口からの内服が困難で、胃ろうや点滴ルートからの投与管理が必要 | 胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理 |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
訪問診療では、単に薬を処方するだけでなく、「確実に、安全に飲める環境」を整えることに重点を置きます。
生活リズムに合わせた服用タイミングの変更、飲み込みやすい形状(粉薬やゼリー状)への変更、一包化(1回分をまとめる)など、患者様の生活実態に即した処方設計を行います。また、重複している薬の整理や減薬(ポリファーマシー対策)も積極的に行います。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
医師が定期的に訪問し、以下の診療・検査を行います。
- 問診・身体診察:バイタルチェック(血圧、脈拍、体温、酸素飽和度)、聴診、触診、視診による全身状態の把握。
- 血液検査・尿検査:薬の効果判定や副作用の確認、栄養状態、肝機能・腎機能の評価。
- 心電図検査:不整脈や心疾患の経過観察(ポータブル機器使用)。
- 処置・管理:インスリン注射の指導・管理、褥瘡(床ずれ)処置、点滴管理など。
在宅療養を始めるためのサポート体制
服薬管理の問題解決には、医療と介護の連携が不可欠です。当院では、地域の調剤薬局と密接に連携しています。薬剤師がご自宅を訪問し、薬のセットや残薬の確認、服薬指導を行うことが可能です。
また、ケアマネジャーや訪問看護師とも情報を共有し、日々の服薬状況を見守る体制を構築します。これらは介護保険サービスの「居宅療養管理指導」などとして、医療と介護が一体となって患者様の生活を支える重要な仕組みです。病院の主治医とも連携し、これまでの治療経過を引き継ぎながらサポートいたします。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
1. 症状悪化と入院リスクの回避
薬の飲み忘れや自己判断での中断は、慢性疾患(高血圧、糖尿病、心不全など)の急激な悪化を招き、緊急入院につながるリスクがあります。定期的な訪問診療による適切な服薬管理は、病状を安定させ、住み慣れた自宅での生活を長く続けるための最大の予防策となります。
2. 患者様とご家族の負担軽減
「薬を飲ませなければ」というご家族のプレッシャーや、大量の薬を管理する手間は計り知れません。プロの手を借りることで、服薬を巡る家族間のトラブルを減らし、穏やかな関係を取り戻すことができます。患者様ご本人も、飲みやすい工夫によって服薬への抵抗感が薄れます。
3. 生活実態に合わせた処方の最適化
外来診療では見えにくい「実際の食事量」「睡眠状況」「自宅に残っている大量の薬(残薬)」を医師が直接目で見て確認できます。これにより、机上の空論ではない、実際の生活に即した必要最小限の薬への整理・調整が可能となり、QOL(生活の質)の向上につながります。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
服薬管理でお悩みなら、まずご相談ください
「薬が管理できない」ことは、決して患者様やご家族の怠慢ではありません。病気や加齢に伴う自然な変化であり、医療的なサポートが必要な状態です。
適切に介入することで、薬の量は減らせるかもしれませんし、飲み忘れも防げるようになります。
日々の服薬が大きな負担となる前に、私たち専門家にご相談ください。患者様らしい生活を守るために、私たちが全力でサポートいたします。

