訪問診療対象の症状

食事がとれない・脱水が心配

「最近、急に食欲が落ちてしまった」「水を飲むだけでむせてしまう」「点滴をしないと弱ってしまうのではないか」

ご家族が食事をとれなくなっていく姿を見るのは、ご本人にとっても、そばで見守るご家族にとっても、大変つらく不安なものです。無理に食べさせようとして誤嚥性肺炎を起こすリスクや、脱水による意識障害など、在宅でのケアには専門的な判断が求められる場面が多々あります。

訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。今の生活を少しでも穏やかに過ごすための選択肢として、まずは私たちにお話を聞かせてください。

訪問診療を検討すべき主な症状・状態

「食事がとれない・水分がとれない」という状態は、加齢による機能低下だけでなく、がんの進行や神経難病、認知症など、さまざまな疾患が背景にあります。特に、通院が体力的に厳しくなった場合や、点滴や栄養管理が日常的に必要になった場合は、訪問診療の導入を検討すべきタイミングです。

以下の表は、当院で対応可能な関連疾患と、訪問診療が必要となる具体的な状態を分類したものです。

状態の分類具体的な症状・状態関連疾患
がん・緩和ケア通院困難な身体状況、疼痛管理、看取り、在宅での緩和ケア希望肺がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など
呼吸器・循環器疾患在宅酸素療法、呼吸管理、心不全の増悪予防、抗凝固療法管理誤嚥性肺炎をくり返す、慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方)、慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理
生活習慣病・慢性疾患服薬管理困難、インスリン注射管理、食事・水分制限の管理高血圧・脂質異常症の在宅管理、糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理
認知症・精神疾患通院拒否、服薬中断、周辺症状(BPSD)への対応、意欲低下認知症(行動・心理症状ふくむ)、うつ病、統合失調症
脳神経疾患・難病嚥下障害、片麻痺、寝たきり、コミュニケーション困難脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病
医療的ケア・処置経管栄養や中心静脈栄養の管理、排泄管理、創傷処置胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、留置カテーテル・膀胱瘻の管理、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のトラブルケア
小児・若年層の不調起立性調節障害、不登校、発達特性に伴う二次障害、摂食障害起立性調節障害(OD)、不安障害/パニック障害、社交不安障害、うつ病(思春期・若年者)、適応障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、チック障害/トゥレット症候群、ゲーム障害・インターネット依存(依存症)

訪問診療で対応可能な医療処置・管理

食事がとれない場合、原因に応じた適切な処置が必要です。当院では、脱水を防ぐための点滴管理から、口から食べる機能を維持するためのサポート、そして終末期における苦痛の緩和まで、ご自宅で以下の処置に対応します。

  • 輸液管理(点滴): 脱水症状の改善や、水分・電解質の補給を行います。
  • 中心静脈栄養(IVH・CVポート)の管理: 抹消静脈からの点滴が困難な場合や、長期的な栄養補給が必要な場合の管理を行います。
  • 経管栄養(胃ろう・経鼻栄養)の管理: 注入指導やチューブの交換、トラブル時の対応を行います。
  • 緩和ケア(疼痛管理): がん等の痛みをコントロールし、穏やかに過ごせるよう薬剤調整を行います。

自宅で実施可能な基本的な診療・検査

  • 血液検査・尿検査: 全身状態や栄養状態、脱水の程度、感染症の有無を調べます。
  • バイタルチェック: 血圧、脈拍、体温、酸素飽和度を測定し、日々の変化を確認します。
  • 心電図検査: 不整脈や虚血性心疾患などの心臓の状態を把握します。
  • 処方・薬剤管理: 症状に合わせたお薬の処方や、飲みやすさの工夫を提案します。

在宅療養を始めるためのサポート体制

ご自宅での療養生活は、医師だけでなく、地域のさまざまな専門職がチームとなって支えます。当院は、訪問看護ステーションやケアマネジャーと緊密に連携を取りながら診療を行います。

居宅療養管理指導を活用することで、医師や薬剤師が定期的にご自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うことが可能です。医療と介護が一体となることで、「食べられない」という不安に対し、口腔ケアや食事形態の工夫、リハビリテーションなど、生活全般を支える視点でのサポートを提供します。

早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)

1. 脱水・栄養状態の重症化予防

「なんとなく元気がない」という段階で医師が介入することで、深刻な脱水や栄養失調に陥る前に対応できます。定期的な診察により、点滴が必要なタイミングを適切に判断し、誤嚥性肺炎などの合併症リスクを低減させます。

2. 通院負担の解消と入院回避

食事がとれず体力が低下している状態で、無理に通院することはご本人にとって大きな負担です。訪問診療であれば、ご自宅にいながら点滴や検査などの医療処置を受けられるため、通院の疲労を防ぎ、状態悪化による緊急入院の可能性を減らすことができます。

3. 最期まで口から食べる支援とQOLの向上

「少しでも口から食べたい」という希望に対し、嚥下機能に合わせた食事指導や栄養管理を行います。また、食べられない場合でも、口腔ケアや苦痛の緩和を通じて、住み慣れたご自宅でその人らしい生活(QOL)を維持できるよう支援します。

ご相談方法と診療開始までの流れ

当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。

① 外来でご相談いただく場合の流れ

訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。

  • 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
  • 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
  • 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。

② 訪問診療を希望する場合の流れ

通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。

  • お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
  • 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
  • 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。

詳しい流れはこちらのページへ

食事がとれない・脱水が心配でお悩みなら、まずご相談ください

「食べられない」ことは、生命の維持に直結するだけでなく、ご家族にとっても大きな心配事です。しかし、適切な医療介入とケアがあれば、ご自宅で穏やかに過ごす時間は守られます。お一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。患者様とご家族が安心して毎日を過ごせるよう、全力でサポートいたします。

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