訪問診療対象の症状

排便トラブル(便秘・下痢・便失禁)

「トイレのことが心配で外出できない」「便が出なくて苦しいけれど、病院へ行くのも大変」排便に関するトラブルは、ご本人にとって身体的な苦痛だけでなく、精神的な尊厳にも関わるデリケートで深い悩みです。また、下着やシーツの交換など、ご家族の介護負担が大きくなりやすい問題でもあります。

当院では、こうしたお悩みを抱える患者様とご家族に寄り添い、ご自宅で安心して過ごせるようサポートいたします。訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせのほか、直接医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。まずはお気軽にお声がけください。

訪問診療を検討すべき主な症状・状態

排便トラブルは、単なる「お通じの問題」ではなく、背後に重大な疾患が隠れていたり、全身状態の悪化につながったりすることがあります。

特に、寝たきりでトイレへの移動が困難な方、認知症により排泄の認識が難しい方、がんの進行や神経難病により排便コントロールが効かなくなった方は、訪問診療による定期的な管理が推奨されます。また、オムツ交換が頻回でご家族の疲弊が著しい場合も、医療介入による改善の余地があります。

以下のような疾患や状態にある方は、通院が困難になりやすいため、訪問診療の対象となります。

状態の分類具体的な症状・状態関連疾患
悪性腫瘍(がん)消化器系の閉塞リスク、抗がん剤や鎮痛剤(オピオイド)による便秘、悪液質による体力低下、在宅緩和ケア・看取り大腸がん、胃がん、膵臓がん、食道がん、肝臓・胆道がん、婦人科系がん、前立腺がん、肺がん、乳がん、血液のがん・脳腫瘍など
神経・筋疾患自律神経障害による頑固な便秘、肛門括約筋の不全による便失禁、腹圧低下による排便困難パーキンソン病/パーキンソン症候群、脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、ALSなど神経難病
慢性疾患・循環器活動量低下による腸蠕動の抑制、薬剤の副作用、浮腫や腹水による腹部圧迫慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理、糖尿病(内服・インスリン管理)
呼吸器疾患息切れによりトイレ動作(いきみ)が困難、酸素療法中の移動制限慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方)、誤嚥性肺炎をくり返す
認知症・精神疾患トイレの場所がわからない、弄便(便を触る)、拒食・過食による排便異常、意欲低下による活動量減少認知症(行動・心理症状ふくむ)、うつ病、統合失調症、不安障害/パニック障害
医療的ケア・処置人工肛門の管理トラブル、経管栄養による下痢・便秘、カテーテル管理ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のトラブルケア、胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、留置カテーテル・膀胱瘻の管理
小児・若年期・その他自律神経調整不全による腸管運動異常、心理的ストレスによる過敏性腸症候群様症状起立性調節障害(OD)、社交不安障害、適応障害、自閉スペクトラム症(ASD)、摂食障害、うつ病(思春期・若年者)、チック障害、ゲーム障害など

訪問診療で対応可能な医療処置・管理

当院では、排便トラブルの原因を診断し、患者様のライフスタイルに合わせたきめ細かなコントロールを行います。

  • 摘便・浣腸: 硬くなった便が詰まっている場合、医師や看護師が用手的に摘便を行ったり、浣腸を用いて排泄を促します。
  • 薬学的コントロール: 下剤の調整だけでなく、麻薬性鎮痛薬(オピオイド)を使用中の方には副作用としての便秘対策を行います。また、下痢止めや整腸剤の適切な使用も指導します。
  • ストーマ(人工肛門)ケア: パウチの交換指導、皮膚トラブル(ただれ等)の処置・外用薬処方を行います。
  • 栄養・水分管理: 食事内容や経管栄養剤の種類の見直し、脱水予防のための点滴管理により、便の性状を整えます。

自宅で実施可能な基本的な診療・検査

ご自宅でも、病院に近い水準の診察や検査が可能です。

血液検査(栄養状態や炎症反応の確認)、尿検査、バイタルチェック(血圧・脈拍・SpO2)、褥瘡の処置、各種薬剤の処方・管理などを定期的に実施します。ご本人の体調変化を早期に発見し、入院を未然に防ぐことを目指します。

在宅療養を始めるためのサポート体制

排便トラブルを抱える在宅療養では、医療と介護の連携が不可欠です。

当院は、地域の訪問看護ステーションやケアマネジャーと緊密に連携し、チームで患者様を支えます。訪問看護師による定期的な摘便や浣腸の実施、オムツ交換の指導などもスムーズに導入可能です。

また、介護保険サービスの居宅療養管理指導を活用することで、医師や薬剤師が専門的な視点からケアプランへの助言を行い、生活環境全体を整えます。ご家族だけで抱え込まず、プロの手に頼れる環境を構築します。

早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)

排便の悩みは「恥ずかしい」と感じて相談が遅れがちですが、早期の医療介入には大きなメリットがあります。

1. 重症化・緊急入院の予防

便秘を放置すると、腸閉塞(イレウス)や糞便性腹膜炎といった命に関わる重篤な状態に進行するリスクがあります。定期的な排便管理を行うことで、これらの合併症を未然に防ぎ、救急搬送や入院のリスクを大幅に減らすことができます。

2. ご本人の苦痛緩和と尊厳の保持

「間に合わずに漏らしてしまう」「お腹が張って苦しい」といった状態は、QOL(生活の質)を著しく低下させます。適切なコントロールにより、不快感を解消し、安心して日常生活を送れるようになります。人としての尊厳を守るケアを提供します。

3. ご家族の介護負担の軽減

頻回な下着の洗濯、トイレ介助、寝具の交換は、介護者にとって大きな身体的・精神的負担です。排便リズムが整うことで、ケアの回数や予測不可能なトラブルが減り、ご家族も心にゆとりを持って接することができるようになります。

ご相談方法と診療開始までの流れ

当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。

① 外来でご相談いただく場合の流れ

訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。

  • 予約・受付:電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
  • 診察・相談:医師が症状について問診・診察を行います。
  • 今後の治療方針検討:診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。

② 訪問診療を希望する場合の流れ

通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。

  • お問い合わせ(HPフォーム/電話):現在の症状についてご相談ください。
  • 事前面談(情報共有・病状確認):訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
  • 診療開始:診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。

詳しい流れはこちらのページへ

排便トラブルでお悩みなら、まずご相談ください

「たかが便秘・下痢」と思わずに、まずは私たちにご相談ください。適切な医療管理を行うことで、ご自宅での生活はもっと快適で安心なものに変わります。

私たちは患者様とご家族の「家で過ごしたい」という想いを全力でサポートいたします。皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしております。

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