咳が長引く
長引く咳は、ご本人にとって体力を消耗させるだけでなく、夜眠れない、食事が喉を通らないなど、日常生活に大きな支障をきたします。また、ご家族にとっても、苦しそうな姿を見ることは辛いものです。「病院に連れて行きたいけれど、移動だけで疲れてしまう」「待合室での感染症が心配」といった理由で受診をためらわれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当院では、通院が困難な方のためにご自宅へ医師が伺う訪問診療を行っております。いきなり自宅に来てもらうのは不安という方や、まずは直接医師と話して通院からの移行を相談したいという方向けに、外来でのご相談も承っております。患者様とご家族が安心して過ごせる療養環境を一緒に考えていきましょう。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
咳が数週間以上続く場合、単なる風邪ではなく、背景に別の疾患が隠れている可能性があります。特にご高齢の方や基礎疾患をお持ちの方にとって、移動を伴う通院は大きな負担となり、かえって病状を悪化させるリスクさえあります。
「少し動くだけで息が切れる」「酸素吸入が必要で外出が難しい」「痰の吸引が頻繁に必要」といった状態は、訪問診療の適応となる典型的なケースです。また、がんの進行に伴う咳や呼吸困難感に対する緩和ケアも、住み慣れたご自宅で受けることが可能です。
当院で対応可能な疾患や状態を以下にまとめました。これらに該当し、通院に負担を感じている場合は、ぜひ一度ご検討ください。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| がん・緩和ケア | 通院困難、疼痛管理、呼吸苦の緩和、終末期の看取り | 肺がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など |
| 呼吸器・循環器疾患 | 息切れ、慢性的な咳・痰、在宅酸素療法、むくみ、動悸 | 誤嚥性肺炎をくり返す、慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方)、慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理 |
| 生活習慣病・慢性疾患 | 血糖コントロール、インスリン注射、食事療法、透析予防 | 糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理 |
| 脳神経・精神疾患 | 麻痺、嚥下障害、認知機能の低下、意欲低下、行動障害 | 認知症(行動・心理症状ふくむ)、うつ病、統合失調症、脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病 |
| 医療的ケア・処置 | 栄養管理、排泄管理、カテーテル管理、皮膚トラブル | 胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、留置カテーテル・膀胱瘻の管理、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のトラブルケア |
| 小児・思春期の課題 | 不登校、発達の特性、起立性調節障害、心理的ケア | 起立性調節障害(OD)、不安障害/パニック障害、社交不安障害、うつ病(思春期・若年者)、適応障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、チック障害/トゥレット症候群、ゲーム障害・インターネット依存(依存症) |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
長引く咳や呼吸器症状に対しては、症状を和らげ、安楽に過ごすための処置を重点的に行います。また、全身状態を把握するための基本的な診察もご自宅で完結します。
ご自宅での呼吸器ケア・症状緩和
呼吸状態を改善し、苦痛を取り除くための管理を行います。
- 在宅酸素療法(HOT)の管理: 慢性呼吸不全や心不全による息切れに対し、酸素濃縮器等の設置・調整を行います。
- 気管内吸引・排痰ケア: 自力での排痰が困難な方に対し、吸引器を用いた痰の吸引や、排痰を促す薬剤の調整を行います。
- ネブライザー(吸入)治療: 喘息やCOPDの増悪予防、痰の切れを良くするための吸入薬管理を行います。
- 医療用麻薬による鎮咳・呼吸困難の緩和: がん性リンパ管症などによる激しい咳や呼吸困難に対し、適切に医療用麻薬を使用し苦痛を緩和します。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
通院することなく、病状の変化を早期に捉えるための診察を行います。
医師による視診・聴診・触診に加え、血液検査(採血)、尿検査、心電図検査、酸素飽和度(SpO2)の測定、細菌培養検査(痰や尿など)などが実施可能です。これらにより、肺炎の兆候や脱水、全身状態の悪化を早期に発見します。
在宅療養を始めるためのサポート体制
訪問診療は、医師だけで行うものではありません。地域の医療・介護スタッフと密に連携し、チームで患者様を支えます。
基幹病院や専門病院とは診療情報の共有を行い、緊急時のバックアップ体制を整えます。また、日々のケアを担当するケアマネジャーや訪問看護師、ヘルパーと連絡を取り合い、患者様の細かな変化を見逃さない体制を作ります。
特に重要となるのが**介護保険サービス(居宅療養管理指導)**です。これは、医師や看護師がご自宅を訪問して療養上の管理や指導を行った際に算定されるもので、ケアマネジャーに対して医学的な視点からケアプラン作成のアドバイスを行う根拠となります。医療と介護が一体となって情報共有することで、咳や呼吸苦などの症状変化に即座に対応できる、切れ目のないサポートが可能になります。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
長引く咳を放置すると、体力低下や誤嚥性肺炎のリスクが高まります。早めに訪問診療を検討することで、多くのメリットが得られます。
1. 重症化および肺炎の予防
定期的な訪問診療により、肺の音や酸素数値を継続的にチェックできます。これにより、風邪の悪化や誤嚥性肺炎の兆候を早期に発見し、抗生剤の投与や点滴などの処置を自宅で迅速に行うことが可能です。結果として、救急搬送されるような重篤な状態を未然に防ぐことにつながります。
2. 不要な入院を減らし自宅で生活できる
「咳がひどいから入院」ではなく、適切な医療管理があれば自宅での生活を継続できます。住み慣れた環境で、ご家族やペットと共に過ごすことは、患者様の精神的な安定(QOL向上)に大きく寄与します。入院による認知機能の低下(せん妄など)や筋力低下のリスクも回避できます。
3. 24時間365日の安心感
当院の訪問診療では、夜間・休日を問わず24時間365日対応可能な体制を整えています。「夜中に咳が止まらなくなったらどうしよう」という不安に対し、いつでも電話相談ができ、必要に応じて医師や看護師が往診するため、ご本人もご家族も安心して療養生活を送ることができます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
咳が長引く症状でお悩みなら、まずご相談ください
「たかが咳」と思わず、長引く症状は身体からのSOSかもしれません。通院が大変で我慢してしまう前に、私たちにご相談ください。ご自宅で安心して医療を受けられる環境を整えることで、患者様らしい穏やかな生活を取り戻すお手伝いをいたします。スタッフ一同、心よりお待ちしております。

