飲み込みにくい・むせる(嚥下障害)
食事は日々の生活において大きな楽しみの一つですが、「最近、食事中にむせることが増えた」「飲み込みにくい」といった変化は、ご本人だけでなく、見守るご家族にとっても大きな不安の種となります。これらは嚥下障害のサインであり、放置すると誤嚥性肺炎などの重篤な状態を引き起こす可能性があります。住み慣れたご自宅で、誤嚥のリスクを減らし、最期までその人らしく過ごせるよう、私たちが医療の面からサポートいたします。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
嚥下障害(飲み込みの障害)は、加齢による筋力低下だけでなく、脳卒中の後遺症や神経難病など、様々な疾患が背景にある場合があります。特に以下のような状態にある方は、通院が困難になるケースが多く、訪問診療による継続的な管理が推奨されます。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 脳・神経疾患による嚥下機能低下 | 麻痺や筋固縮により、口の動きや喉の反射が鈍くなり、飲み込みが困難になる。 | 脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病、認知症(行動・心理症状ふくむ) |
| 呼吸器疾患・繰り返す感染症 | 食事中のむせ込み、痰の増加、発熱を繰り返す。呼吸機能の低下により誤嚥のリスクが高い。 | 誤嚥性肺炎をくり返す、慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方) |
| 栄養摂取困難・経管栄養管理 | 口からの食事が困難で、胃ろうや経鼻経管栄養、中心静脈栄養を行っている。 | 胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、摂食障害(神経性やせ症・過食症) |
| がん・末期状態(緩和ケア) | 腫瘍による通過障害や、全身衰弱により食事が摂れない。最期まで自宅で過ごしたい。 | 食道がん、肺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など |
| その他の合併症・精神疾患 | 精神的な要因による食欲不振や、合併症の管理が必要な状態。 | 慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理、糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、うつ病、統合失調症 |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
嚥下障害を抱える患者様に対しては、単に薬を処方するだけでなく、誤嚥性肺炎の予防と栄養状態の維持を主眼に置いた管理を行います。ご自宅での生活環境に合わせ、食事形態の指導や姿勢の調整など、生活に密着したアドバイスも行います。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
医師が聴診器で呼吸音や嚥下音を確認する診察に加え、必要に応じて血液検査、尿検査などを行い、全身状態や脱水、炎症反応などを定期的にチェックします。
- 誤嚥性肺炎の治療・予防: 抗生物質の投与(点滴・内服)、酸素療法、吸引処置などを行います。
- 栄養管理: 経口摂取が難しい場合の胃ろう(PEG)の管理・交換、経鼻経管栄養の管理、中心静脈栄養(IVH/ポート)の管理を行います。
- 食事・服薬指導: 嚥下機能に応じた食事形態(きざみ食、とろみ食など)の助言や、飲み込みやすい服薬ゼリー等の活用指導を行います。
- 疼痛・症状緩和: がん等の疾患に伴う痛みや苦痛の緩和ケアを行います。
在宅療養を始めるためのサポート体制
安全な在宅療養を継続するためには、医療と介護の連携が不可欠です。当院は、地域のケアマネジャーや訪問看護ステーションと密に連絡を取り合い、患者様の情報を共有します。
また、介護保険サービスの「居宅療養管理指導」を活用し、医師や薬剤師などが定期的にご自宅を訪問して、療養上の管理や指導を行います。これにより、医療的な視点に基づいたケアプランの作成が可能となり、ヘルパーや訪問入浴などの介護サービスともスムーズに連携できる体制を整えます。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
誤嚥性肺炎の早期発見と重症化予防
嚥下機能が低下している方にとって、最大のリスクは誤嚥性肺炎です。定期的な訪問診療により、わずかな体調変化や肺雑音を早期に察知し、速やかに治療を開始することで、重症化や緊急入院のリスクを低減します。
栄養状態の維持と食べる楽しみの支援
「食べられない」ことは体力低下に直結します。ご本人の機能に合わせて、口から食べる可能性を模索しつつ、必要に応じて適切な栄養療法(点滴や経管栄養など)を組み合わせ、体力の維持とQOL(生活の質)の向上を図ります。
通院負担の解消と家族の安心
移動自体が誤嚥や嘔吐のリスクとなる患者様にとって、通院は大きな負担です。医師が自宅へ出向くことで、移動の苦痛をなくし、ご家族もリラックスした状態で、食事の介助方法や日々の不安について相談することができます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
飲み込みにくい・むせる(嚥下障害)でお悩みなら、まずご相談ください
「飲み込みにくさ」は、年齢のせいだと諦めてしまいがちですが、適切な管理とケアによって、肺炎を防ぎ、穏やかな在宅生活を続けることが可能です。ご本人様が少しでも長く、口から味わう喜びを感じられるよう、私たちが全力でサポートいたします。まずは一度、お気軽にご相談ください。

