慢性腎障害
症状・疾患の概要
慢性腎障害(CKD: Chronic Kidney Disease)は、腎臓の機能が長期間にわたり低下し続ける疾患です。進行すると腎不全に至り、最終的には人工透析や腎移植が必要になることがあります。腎臓は血液の老廃物や余分な水分をろ過して尿として排出する役割を担っており、この機能が損なわれると体内に毒素が蓄積し、全身の健康に影響を与えます。高血圧や糖尿病が主要な原因であり、日本では多くの人がCKDを抱えています。
症状について
慢性腎障害の初期段階では、特に目立った症状が現れないことが多いですが、病状が進行するにつれて次のような症状が現れることがあります。
- 倦怠感や疲労感:体内の老廃物が蓄積し、だるさや疲れやすさを感じます。
- むくみ(浮腫):腎臓の水分排出機能が低下することで、顔や足にむくみが現れることがあります。
- 尿の変化:尿量の減少や、泡立ち、血尿が見られることがあります。
- 食欲不振や吐き気:進行すると、食欲低下や吐き気が出ることがあります。
- 高血圧:腎機能が低下すると、血圧が上昇しやすくなります。
診断と検査について
慢性腎障害は、血液検査や尿検査を通じて診断されます。以下の検査が主に行われます。
- 血液検査(クレアチニン値・GFR):腎臓のろ過機能を示す「クレアチニン値」や、「推算糸球体濾過量(eGFR)」を測定し、腎機能の低下度合いを評価します。eGFRが60未満でCKDと診断されます。
定期的な検査を行うことで、早期に腎障害を発見し、進行を防ぐことが重要です。
治療法について
慢性腎障害の治療は、病状の進行を抑えることを目的としています。以下の治療法が一般的です。
ライフスタイルの改善
- 減塩:塩分の摂取を控えることで、腎臓への負担を軽減し、高血圧の管理に役立てます。
- 適度な運動:血圧の管理や血糖値の安定化を目指し、適度な運動を取り入れます。
- 禁煙:喫煙は腎機能をさらに悪化させるため、禁煙が推奨されます。
薬物療法
- 降圧薬(ACE阻害薬・ARB):高血圧を管理し、腎臓への負担を減らします。
- 糖尿病治療薬:糖尿病が原因の場合、血糖値をコントロールするための薬が使用されます。
- 利尿薬:腎臓の水分排出機能を補助し、むくみを軽減します。
透析療法
腎機能が著しく低下し、腎不全に至った場合、人工透析が必要になります。透析には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。患者様のライフスタイルや病状に合わせて適切な方法を選びます。当院では、透析導入が行える総合病院への紹介や、導入後のクリニックの紹介なども行っています。
腎移植
腎不全が進行し、透析だけでは十分な機能を果たせない場合、腎移植が治療の選択肢となります。
予防について
慢性腎障害の予防には、早期から腎臓に優しい生活習慣を心がけることが重要です。
- 定期的な健康診断:特に高血圧や糖尿病のリスクがある方は、腎機能を定期的にチェックしましょう。
- バランスの取れた食事:減塩や低たんぱく質の食事を心がけ、腎臓に負担をかけないようにします。
- 適度な運動:血圧と血糖のコントロールに役立つ有酸素運動を取り入れることが推奨されます。
- 十分な水分摂取:適切な水分補給を行い、腎臓の負担を軽減します。
- 血圧・血糖の管理:糖尿病や高血圧は腎障害の主な原因であるため、これらの管理が重要です。
よくある質問について
Q1. 慢性腎障害が進行すると透析が必要になりますか?
A. 腎機能が極端に低下し、腎不全に至った場合、透析が必要になります。進行を遅らせるために、早期からの治療と生活習慣の見直しが重要です。
Q2. 自分で腎臓の機能低下に気づくことはできますか?
A. 初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検査が唯一の確認手段です。血圧が高い、糖尿病がある方は特に注意が必要です。
Q3. 腎障害を防ぐために、日常生活で気をつけるべきことは?
A. 減塩、バランスの取れた食事、適度な運動が重要です。血圧と血糖値を定期的に管理し、禁煙を心がけましょう。