尿カテ閉塞と発熱をくり返す—交換時期の見直しと清潔操作で再発が減った
自宅での療養生活において、尿道カテーテル(尿の管)を使用されている患者様やご家族にとって、カテーテルのトラブルは非常に大きなストレスの種かと思います。「管が詰まっておしっこが出なくなった」「交換したばかりなのに、また熱が出た」といった経験をされ、不安な夜を過ごされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カテーテルの閉塞やそれに伴う発熱は、決して珍しいことではありませんが、繰り返すことで患者様の体力は消耗し、介護されるご家族の負担も増してしまいます。しかし、適切な管理方法の見直しや、日々のちょっとしたケアの工夫で、これらのトラブルを大幅に減らせる可能性があります。
この記事では、尿道カテーテルが詰まる原因や発熱との関係、そして再発を防ぐための具体的なポイントについて、わかりやすく解説します。
なぜ尿カテは詰まるの?繰り返す発熱の原因とは
尿道カテーテルを入れていると、スムーズに排尿管理ができる反面、どうしても管が詰まってしまうリスクがつきまといます。まずは、なぜ詰まってしまうのか、そしてなぜそれが発熱につながるのか、その仕組みを理解しておきましょう。
カテーテルが詰まる主な原因
カテーテルが詰まる原因は一つではありませんが、多くの場合、尿の中に含まれる成分や細菌の影響が関係しています。
もっともよく見られるのは、尿の成分が固まってできる「結晶」や、膀胱の壁などから剥がれ落ちた「浮遊物」が管の中に溜まってしまうケースです。健康な状態であれば尿と一緒に体外へ排出される細かな汚れも、管の中という狭い通り道では、蓄積して大きな塊となり、流れを止めてしまうことがあります。
また、カテーテル自体が異物であるため、体の中で細菌が繁殖しやすくなることも原因の一つです。細菌が増えると、尿が濁ったり、粘り気が強くなったりして、管の内側に汚れが付着しやすくなります。これが「バイオフィルム」と呼ばれる膜を作り、閉塞の引き金になることもあります。
詰まりと発熱の密接な関係
「管が詰まる」ことと「熱が出る」ことは、セットで起こることが多いです。これは、尿の流れが止まることで、体にとって有害な状況が生まれるためです。
尿は本来、体の中のいらないものを外に出すためのものです。しかし、カテーテルが詰まって尿が出せなくなると、膀胱の中に古い尿が溜まり続け、細菌が爆発的に増えやすい環境になります。さらに、膀胱がパンパンに膨らむことで、細菌を含んだ尿が腎臓の方へ逆流してしまうリスクも高まります。
こうして細菌が腎臓に達したり、血液の中に入り込んだりすることで、「尿路感染症」を引き起こし、高熱が出るのです。つまり、カテーテルの詰まりを防ぐことは、単におしっこを出すためだけでなく、深刻な感染症を予防し、患者様の命を守ることにもつながります。
トラブルを減らすための「交換時期」の見直し
カテーテルのトラブルを繰り返している場合、まず検討したいのが「交換するタイミング」の見直しです。一般的には2週間から4週間に1回の交換が目安とされていますが、これはあくまで標準的な期間であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
適切な交換頻度は人によって違う
患者様の体質や尿の状態によって、カテーテルの汚れやすさは大きく異なります。例えば、尿の中に浮遊物が多い方や、過去に何度も詰まらせた経験がある方の場合は、標準的な交換期間を待たずに閉塞してしまうことがあります。
もし、「いつも交換予定日の数日前に詰まってしまう」というパターンを繰り返しているのであれば、現在の交換サイクルがその方の体に合っていない可能性があります。このような場合は、トラブルが起きる前に先回りして新しいものに交換することで、閉塞のリスクを下げることができます。
詰まりやすい人が早めに交換するメリット
交換頻度を上げることには、いくつかのメリットがあります。まず、管の内側に汚れが蓄積して完全に詰まる前にリセットできるため、深夜や休日の緊急トラブルを減らすことができます。これは患者様ご本人の苦痛を和らげるだけでなく、ご家族の精神的な安心感にもつながります。
また、常に比較的きれいな状態の管を使用することで、膀胱内での細菌繁殖を抑えやすくなり、結果として発熱の頻度を減らせることも期待できます。
「頻繁に変えるのは負担が大きいのでは」と心配されるかもしれませんが、詰まってから緊急対応で処置をするよりも、計画的に交換するほうが、結果的に体への負担も少なく、生活のリズムも保ちやすくなります。医師や看護師と相談し、その方に最適なスケジュールを見つけることが大切です。
自宅でできる「清潔操作」と管理のポイント
交換時期の見直しとともに重要なのが、日々のケアです。ご自宅での管理において「清潔操作」を意識することで、細菌の侵入を防ぎ、カテーテルを長持ちさせることができます。ここでは、ご家族ができる具体的な工夫をご紹介します。
尿バッグの扱いで気をつけること
尿バッグ(採尿袋)の扱いは、感染予防の要です。特に大切なのは、バッグの位置です。常に「膀胱(お腹の位置)よりも低く」保つことを意識してください。バッグを高く持ち上げてしまうと、一度出た尿が逆流し、感染の原因になります。寝ている時だけでなく、車椅子への移動時や入浴の際も注意が必要です。
また、尿を捨てる際にも注意が必要です。排出口がトイレの便器や床、容器などに直接触れないようにしてください。排出口は細菌の入り口になりやすいため、尿を捨て終わった後は、アルコール綿などで排出口の先端を消毒してからキャップを閉める習慣をつけると、より清潔を保てます。
陰部洗浄と保清の重要性
カテーテルが入っている部分は、どうしても汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい場所です。毎日の入浴や清拭(体を拭くこと)で、カテーテルが挿入されている尿道口の周りを清潔に保つことが非常に重要です。
お風呂に入れない日でも、ぬるま湯を使って陰部を洗い流したり、清潔なタオルで優しく拭いたりしましょう。この時、カテーテル自体も体の近くの部分を優しく拭いて汚れを落とすと効果的です。ゴシゴシと強くこするのではなく、泡立てた石鹸で優しく洗い、洗剤が残らないようによく流すのがポイントです。
水分摂取の工夫
体の中からのケアとして、「水分をしっかりとる」ことも大切です。水分摂取量が少ないと、尿の色が濃くなり、老廃物が濃縮されて管が詰まりやすくなります。
医師から水分制限の指示がない場合は、こまめに水分を摂るように心がけましょう。尿の量が増えることで、膀胱や管の中の細菌や汚れを自然に洗い流す「自浄作用」が働きます。1日の尿量がしっかりと確保できているか、尿の色が濃くなりすぎていないか、日々の観察の目安にしてみてください。
繰り返すトラブルは訪問診療で解決できることも
ご家族だけでカテーテルの管理を完璧に行うのは、とても大変なことです。特にトラブルが続いている場合は、「また詰まるのではないか」という不安が常につきまとうでしょう。そのような時は、在宅医療(訪問診療)のサポートを受けることが解決への近道になります。
専門家による定期的な管理とチェック
訪問診療を利用すると、医師や看護師が定期的に自宅を訪問し、カテーテルの状態や尿の性状、全身の状態をチェックします。「少し尿が濁ってきたから、洗浄を行いましょう」「最近詰まりやすいから、カテーテルの素材や太さを変えてみましょう」といった、プロの視点からのきめ細やかな対応が可能です。
また、ご家族が行う日々のケアについても、その場の環境に合わせた具体的なアドバイスを受けることができます。介護負担を減らしながら効果的なケアをする方法を一緒に考えることで、在宅生活の質を向上させることができます。
緊急時の対応体制がある安心感
どれほど注意していても、カテーテルのトラブルは突発的に起こることがあります。そんな時、24時間365日対応してくれる訪問診療のクリニックとかかりつけ医としてつながっていれば、夜間や休日でも電話で相談ができ、必要に応じて往診を受けることができます。
「何かあったらすぐに連絡できる場所がある」という安心感は、在宅療養を続ける上で何よりの支えになります。救急車を呼ぶべきか迷うような状況でも、専門スタッフの判断を仰ぐことができるため、落ち着いて対応することが可能になります。
まとめ
尿道カテーテルの閉塞と発熱を繰り返す悪循環は、適切な管理とケアで断ち切れる可能性があります。
大切なのは、「詰まるのは仕方がない」と諦めるのではなく、その方に合った交換時期を見極め、日々の清潔操作を徹底することです。そして、それらをご家族だけで抱え込まず、医療のプロと連携しながら行っていくことが重要です。
もし現在、カテーテルの管理でお困りのことがあれば、ぜひ地域の訪問診療クリニックにご相談ください。トラブルを未然に防ぎ、患者様とご家族が安心して過ごせる日々を取り戻すために、私たちが全力でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

