社交不安障害
人前で話すことや、他人の視線に対して強い恐怖を感じ、日常生活に支障をきたしてしまう社交不安障害(SAD)。「病院に行きたいけれど、待合室にいることすら辛い」「医師と対面するのが怖い」という理由で、適切な治療を受けられずに苦しんでいる方は少なくありません。ご家族にとっても、社会との接点を失っていく姿を見るのは辛いことでしょう。
当院では、そのような通院が困難な方のために、医師が自宅へ伺う「訪問診療」を行っています。住み慣れた安心できる環境で、少しずつ治療を進めていくことが可能です。訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。ご本人様だけでなく、ご家族様からのご相談も歓迎しております。「在宅医療」という選択肢が、心の安らぎを取り戻すきっかけになることを願っています。
疾患と訪問診療の対象
社交不安障害とは
社交不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)とは、人から注目される場面や、他人と接する状況に対して過剰な恐怖や不安を感じ、その状況を避けようとしてしまう疾患です。単なる「性格の問題」や「あがり症」ではなく、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることなどが原因と考えられている医学的な病気です。
この疾患の最大の特徴は、不安が強くなると動悸、発汗、手の震えなどの身体症状が現れることです。訪問診療の視点から見ると、身体機能には問題がなくても、「外出してクリニックに行く」という行為そのものが最大のハードルとなっている点が重要です。「電車に乗れない」「待合室で他人に見られるのが怖い」といった心理的な障壁が治療の妨げとなり、結果として自宅に引きこもってしまうケースが多く見られます。そうした状況で、精神状態が不安定になり、通院治療の継続が困難な場合に、訪問診療が必要とされます。
訪問診療の対象となる方
社交不安障害において、訪問診療の対象となるのは主に以下のような状況にある方です。
- 外出への恐怖が強く通院ができない方:他人の視線への恐怖から自宅を出ることができず、医療機関への受診が途絶えてしまっている方。公共交通機関を利用することに強いパニックや予期不安を感じる方も対象です。
- 自宅での長期的な療養環境の調整が必要な方:長期間の引きこもり状態にあり、社会復帰に向けてまずは自宅という安全な場所で、継続的な服薬管理や精神的なケアを必要としている方。
- ご家族のサポートだけでは受診が困難な方:ご家族が説得しても病院へ行くことを拒否してしまう、あるいはご家族自身が高齢などで付き添いが難しく、医療の手が届いていない方。
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
社交不安障害の患者様やご家族は、自宅での生活において以下のような特有の悩みや不安を抱えています。
- 誰かが家に来ることへの恐怖:「医師や看護師であっても、知らない人が家に来るのは怖い」「どう接していいかわからない」という対人緊張による不安。
- 症状の悪化と緊急時の対応:突然のパニック発作や、過呼吸が起きた際にどう対応すればよいか分からず、家族が疲弊してしまう。
- 社会からの孤立感:「このまま一生家から出られないのではないか」という将来への絶望感や、社会から取り残されているという焦り。
- 服薬管理の難しさ:自己判断で薬を中断してしまったり、逆に不安から飲みすぎてしまったりするリスク。
- 家族関係の悪化:「甘えているだけではないか」という誤解や、対応を巡る家族間の意見の不一致によるストレス。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、社交不安障害の患者様が安心して在宅医療を受けられるよう、以下のようなサポートを提供しています。
- 患者様のペースに合わせた診療スタイル:最初から対面で話すことが難しい場合は、ふすま越しやドア越しの会話から始めるなど、患者様の心理的負担を最小限にする配慮を行います。無理に会話を強要せず、信頼関係(ラポール)の構築を最優先にします。
- 自宅での適切な薬物療法と管理:抗不安薬やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など、症状に合わせた適切な薬の処方と調整を自宅で行います。副作用の確認も定期的に行い、安全な服薬をサポートします。
- 環境調整とご家族への支援:患者様がリラックスできる環境作りのアドバイスや、ご家族に対して疾患への正しい理解を促し、接し方(過干渉や無関心を避けるなど)を指導します。
- 24時間365日の緊急往診体制:夜間や休日に不安が強くなったり、パニック発作が起きたりした場合でも、当院は24時間365日の緊急往診体制を整えています。いつでも連絡が取れる安心感が、症状の安定につながります。
在宅療養を始めるためのサポート体制
在宅療養を成功させるためには、クリニックだけでなく、多職種との連携が不可欠です。当院では、地域の基幹病院や精神科専門医とも連携を図りながら、必要に応じてスムーズな紹介や情報の共有を行います。
また、日々の生活を支えるためには、ケアマネジャーや訪問看護ステーションとの協力も重要です。特に訪問看護師は、服薬の確認や日々の体調変化の観察、話し相手としての精神的サポートなど、より密接なケアを提供します。
これらを利用するにあたり、介護保険サービスの「居宅療養管理指導」を活用することで、医療と介護が一体となった包括的なサービスを受けることが可能です。医師、看護師、ケアマネジャーがチームとなり、患者様が社会とのつながりを少しずつ取り戻せるよう、焦らず長期的な視点でサポートしていきます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療を検討する前に、まずは外来で医師と話をしたいという方のための流れです。
- ご予約・お問い合わせ:お電話またはWeb予約フォームより、外来受診の予約をお取りください。「訪問診療の相談をしたい」と伝えていただくとスムーズです。
- ご来院・受付:予約日時にご来院ください。保険証とお薬手帳(お持ちの場合)をご持参ください。
- 医師による診察・相談:現在の症状や、通院が困難な理由、在宅医療への移行に関する不安などを医師にお話しください。
- 治療方針の検討:外来通院を継続するか、訪問診療へ移行するか、患者様とご家族の状況に最適な方針を一緒に決定します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
最初から訪問診療を希望される場合の流れです。
- お問い合わせ:当院のHPのお問い合わせフォーム、またはお電話にてご連絡ください。現在の状況を簡単にお伺いします。
- 事前面談・相談:支援相談員がご自宅や施設へ伺うか、またはお電話にて、詳しい病状や生活状況、ご要望を確認させていただきます。この時点で不安な点は何でもご質問ください。
- 診療開始:医師と看護師が定期的にご自宅へ訪問し、計画に基づいた診療を開始します。
社交不安障害による自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
「人の目が怖くて外に出られない」「通院したくても体が動かない」といったお悩みは、決して甘えではありません。社交不安障害は適切な治療と環境調整によって、症状を和らげることができる疾患です。
無理をして通院しようとせず、まずはご自宅という安全な場所で医療を受けることから始めてみませんか。当院は、患者様の「治したい」「変わりたい」という気持ちに寄り添い、焦らずゆっくりと歩幅を合わせてサポートいたします。社交不安障害の在宅療養でお困りなら、一人で抱え込まず、まずはお気軽に当院へご相談ください。

