脳腫瘍
脳腫瘍の治療過程において、手術や放射線治療、化学療法などの専門的な治療を経た後、ご自宅での療養生活に移行される際、患者様ご本人はもちろん、ご家族にとっても多くの不安が伴うことと存じます。
特に脳腫瘍は、腫瘍の発生部位によって運動麻痺や感覚障害、高次脳機能障害など、多様な神経症状が現れるため、日常生活に細やかなサポートが必要となるケースが少なくありません。「通院の移動が辛い」「急な体調変化が怖い」といったお悩みに対し、「訪問診療」や「在宅医療」は、住み慣れたご自宅で安心して療養を続けるための有力な選択肢となります。
訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。まずはどのような小さなことでも構いませんので、私たちにお話をお聞かせください。
疾患と訪問診療の対象
脳腫瘍とは
脳腫瘍とは、頭蓋内に発生する腫瘍の総称です。良性と悪性があり、また脳そのものから発生する「原発性」と、他の臓器のがんが転移した「転移性」に分けられます。
脳腫瘍が在宅医療の文脈で特に重要となるのは、腫瘍による脳への圧迫や周囲のむくみ(脳浮腫)によって引き起こされる様々な神経症状です。手足の麻痺による歩行困難、言語障害、意識障害、けいれん発作、そして頭蓋内圧亢進による激しい頭痛や吐き気など、症状は多岐にわたります。
これらの症状により、自力での通院が著しく困難になったり、定期的な点滴や服薬管理が必要になったりする場合、外来通院から訪問診療への切り替えが必要となるケースが多く見られます。在宅医療では、腫瘍に対する積極的な治療と並行して、あるいは治療終了後の緩和ケアとして、苦痛を和らげ生活の質(QOL)を保つためのケアが中心となります。
訪問診療の対象となる方
脳腫瘍を患う患者様で、以下のような状況にある方が主な対象となります。
- 運動麻痺やふらつきがあり、病院への通院が身体的に大きな負担となっている方。
- 認知機能の低下や性格変化、意識障害があり、ご家族の付き添いなしでは外出が難しい方。
- けいれん発作(てんかん発作)のリスクがあり、常に医療的な見守りが必要な方。
- 抗がん剤治療や放射線治療後の経過観察を、自宅でリラックスして行いたい方。
- 積極的な治療を終え、最期の時間を住み慣れたご自宅で家族と共に過ごしたい(お看取り)と希望される方。
当院の訪問診療サポート
在宅で直面する具体的な不安
脳腫瘍の在宅療養では、身体的なケアだけでなく、脳の機能障害に起因する精神的・神経的な症状への対応がご家族の大きな不安要素となります。
- けいれん発作への恐怖: 突然のけいれん発作が起きた際、どう対応すればよいか分からずパニックになってしまう。
- 麻痺や介助の負担: 片麻痺や四肢麻痺により、トイレや入浴、移動などの日常生活動作に重い介助が必要になる。
- 性格変化や高次脳機能障害: 以前と性格が変わってしまった、怒りっぽくなった、記憶障害があるなど、患者様とのコミュニケーションに戸惑いを感じる。
- 頭痛や吐き気のコントロール: 脳圧亢進による強い頭痛や嘔吐が自宅でコントロールできるか心配。
- 急変時の対応: 意識レベルが低下した際や、容体が急変した際に、すぐに医師に連絡がつくのか不安。
当院が提供できる専門的な治療・ケア
当院では、脳腫瘍特有の症状やリスクを熟知した医師とスタッフが、患者様とご家族が安心して過ごせるよう、専門的な在宅医療を提供いたします。
- 症状緩和と薬物療法: 脳浮腫に対するステロイド治療や、けいれん発作を予防するための抗けいれん薬の調整をきめ細かく行います。また、頭痛や吐き気に対しては、内服薬だけでなく、点滴や坐薬など患者様の状態に合わせた最適な方法で苦痛を緩和します。
- 全身状態の管理と生活指導: 麻痺による床ずれ(褥瘡)の予防・処置や、飲み込みが悪くなった場合(嚥下障害)の栄養管理(経管栄養や点滴管理)を行います。
- 精神的サポートと環境調整: 高次脳機能障害や精神症状に対し、ご家族への介助指導や接し方のアドバイスを行い、介護負担の軽減に努めます。
- 緩和ケアとお看取り: 終末期においては、痛みや苦しみを最小限に抑える緩和ケア(鎮静含む)を徹底し、ご希望に応じたご自宅でのお看取りをサポートします。
何より、当院には「24時間365日の緊急往診体制」がございます。夜間や休日に発作が起きたり、痛みが強くなったりした場合でも、いつでも連絡がつき、必要に応じて医師が駆けつける体制を整えています。この安心感が、在宅療養を支える基盤となります。
在宅療養を始めるためのサポート体制
脳腫瘍の在宅療養は、医師だけで支えるものではありません。当院は、これまで治療を受けてこられた基幹病院と緊密に連携し、診療情報の共有を行います。
また、日々の療養生活を支えるためには、ケアマネジャー(介護支援専門員)や訪問看護ステーションとの連携が不可欠です。当院が窓口となり、地域の医療・介護スタッフとチームを組んで患者様をサポートします。
さらに、介護保険制度における「居宅療養管理指導」を活用することで、医師や薬剤師がご自宅を訪問して療養上の管理や指導を行い、医療と介護が一体となった切れ目のないサービス提供を実現します。介護申請がお済みでない場合も、申請のサポートからご相談を承ります。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
まずは外来にて、現在の病状や在宅療養への不安、ご希望をお伺いします。
- ご予約: お電話またはWebフォームより「外来相談」をご予約ください。
- ご来院・相談: 医師が患者様またはご家族とお話しし、訪問診療の適応や具体的なプランについて説明します。
- 方針決定: 在宅医療へ移行するか、外来通院を継続するかなど、最適な治療方針を一緒に決定します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
- お問い合わせ: HPのお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
- 事前面談: 相談員(または医師・看護師)が、現在の状況やご希望を詳しくお伺いします。(入院中の場合は病院へ伺うことも可能です)
- 初回訪問・診療開始: 契約手続き後、医師と看護師がご自宅へ伺い、計画に基づいた定期的な診療を開始します。
脳腫瘍による自宅での療養不安や症状でお悩みなら、まずご相談ください
脳腫瘍という病気は、身体的な変化だけでなく、心や生活にも大きな変化をもたらすことがあります。ご自宅での療養において、「発作が起きたらどうしよう」「家族だけで支えられるだろうか」という不安を抱え込む必要はありません。
私たち専門職がチームとなり、痛みの緩和から日々の生活支援、そして緊急時の対応まで、24時間体制でサポートいたします。患者様が住み慣れた場所で、ご自分らしく穏やかな時間を過ごせるよう、全力を尽くします。脳腫瘍の在宅療養でお困りなら、まずはお気軽に当院までご相談ください。

