食欲がない・食べ過ぎる/体重が急に変わる
「最近、急に食欲が落ちて痩せてしまった」「食べても食べても満たされず、体重変動が激しい」「食事を拒否してしまう」など、ご自身やご家族の食事と体重に関するお悩みは、身体的にも精神的にも大きな負担となります。
特に、外出や通院が難しい状況にある場合、誰に相談すればよいか分からず、ご家庭だけで抱え込んでしまうことも少なくありません。当院では、そのようなお悩みを抱える方のために、ご自宅へ医師が伺う訪問診療を行っています。住み慣れた環境で、心身の状態に合わせた適切なケアを提供いたします。
また、訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。まずは一度、お気軽にご連絡ください。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
食欲の異常や急激な体重変化は、身体的な病気だけでなく、心の問題や環境の変化など、様々な要因が絡み合って起こります。以下のような状態が見られる場合、通院が困難であれば訪問診療の導入をご検討ください。
- 極端な食欲不振: ほとんど食事がとれず、水分摂取もままならない状態。
- 急激な体重減少: 短期間で体重が数キロ以上落ち、体力が著しく低下している。
- 過食と嘔吐: ストレス等で大量に食べた後、自己誘発嘔吐を繰り返してしまう。
- 食事の拒否: 認知症や精神疾患の影響で、食事を認識できない、または食べることを拒んでしまう。
- 嚥下機能の低下: 飲み込みが悪く、食事中にむせることが増え、食事が苦痛になっている。
- 外出困難: 体力低下や精神的な不安により、病院への通院自体が大きな負担となっている。
食欲や体重の変化に関連し、訪問診療の対象となり得る疾患や状態は以下の通りです。
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 悪性腫瘍(緩和ケア・看取り) | がん悪液質による食欲不振、体重減少、嚥下障害、全身倦怠感 | 肺がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など |
| 精神・神経疾患 | 抑うつ状態による食欲低下、過食、拒食、精神的な不安定さ | うつ病、統合失調症、不安障害/パニック障害、社交不安障害、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、チック障害/トゥレット症候群、ゲーム障害・インターネット依存(依存症) |
| 認知症・神経難病 | 認知機能低下による摂食障害、嚥下障害、意欲低下、行動・心理症状(BPSD) | 認知症(行動・心理症状ふくむ)、脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病 |
| 小児・思春期の課題 | 起立性調節障害による倦怠感、発達特性による偏食、ストレス性の食行動異常 | 起立性調節障害(OD)、うつ病(思春期・若年者)、適応障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症) |
| 慢性臓器不全・生活習慣病 | 心不全や腎不全による悪液質、食事制限の管理困難、呼吸苦による摂食不良 | 慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方)、慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理、糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理 |
| その他の処置・管理 | 経口摂取困難に伴う栄養管理、排泄管理 | 誤嚥性肺炎をくり返す、胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、留置カテーテル・膀胱瘻の管理、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のトラブルケア |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
食欲不振や体重変化の原因に対し、適切な栄養管理や投薬調整を行い、症状の緩和と生活の質の維持を目指します。
- 栄養管理:高カロリー輸液(点滴)、経管栄養(胃ろう・経鼻栄養)の管理、中心静脈栄養(IVH/CVポート)の管理。
- 症状緩和:制吐剤の使用や、がん性疼痛・苦痛の緩和ケア。
- 精神的ケア:向精神薬の調整、睡眠環境の調整、カウンセリング的なアプローチによる不安の軽減。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
通院することなく、ご自宅で以下のような診察や検査を受けていただけます。
- 診察・処方:医師による全身状態の診察、内服薬や外用薬の処方・管理。
- 血液検査・尿検査:栄養状態(アルブミン値など)、貧血、脱水、臓器機能の評価。
- バイタルチェック:血圧、脈拍、酸素飽和度、体温の測定による状態把握。
- 心電図検査:不整脈や心機能の確認(ポータブル機器使用)。
- 各種培養検査:感染症の有無を確認するための検査。
在宅療養を始めるためのサポート体制
在宅療養は、医師だけで支えるものではありません。地域の病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャーと密に連携し、チームで患者様の生活をサポートします。
特に重要なのが、介護保険サービスの一つである**「居宅療養管理指導」**です。これは、医師や薬剤師、管理栄養士などがご自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービスです。
医療と介護が一体となって提供されることで、栄養指導や食事形態の工夫、服薬管理のサポートなどがスムーズに行われ、患者様とご家族が安心して生活できる環境を整えます。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
1. 栄養状態の改善と身体機能の維持
食欲不振や体重減少を放置すると、体力や免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、寝たきりになったりするリスクが高まります。
定期的な訪問診療により、早期に栄養状態を評価し、点滴や栄養剤の導入、食事内容の調整などを行うことで、体力の維持・向上を図ることができます。特に高齢者においては、フレイル(虚弱)の進行を防ぐために重要です。
2. 精神的な安定と環境調整
摂食障害やうつ病、認知症などが背景にある場合、通院のストレス自体が症状を悪化させることがあります。
住み慣れた自宅でリラックスして診察を受けることで、精神的な負担が軽減され、症状の安定につながります。また、医師が生活環境を直接見ることで、患者様に合った具体的な療養アドバイスが可能になります。
3. 合併症の予防と早期発見
急激な体重変化は、糖尿病や甲状腺疾患、心不全、がんなどの重大な病気のサインである場合があります。
定期的に医師が全身状態をチェックすることで、隠れた病気や合併症の兆候を早期に発見し、重症化や緊急入院を防ぐことができます。日々の変化を継続的に観察することが、安全な在宅生活を守る鍵となります。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付:電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談:医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討:診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話):現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認):訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始:診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
食欲がない・食べ過ぎる/体重が急に変わるでお悩みなら、まずご相談ください
「食べられない」「体重が変わる」といった変化は、心と体からの重要なSOSです。ご家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りることで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
当院は、患者様お一人おひとりの生活背景や想いに寄り添い、安心してご自宅で過ごせるよう全力でサポートいたします。
通院が難しいと感じたら、まずは一度、お気軽にご相談ください。

