むくみ(浮腫)
ご自身やご家族の「手足のむくみ」にお悩みではありませんか。
「足がパンパンで靴が履けない」「顔やまぶたが腫れぼったい」「急に体重が増えた」といった症状は、心臓や腎臓などの病気が隠れているサインかもしれません。
通院が大変になってきた方、自宅での療養を希望される方にとって、むくみの管理は日々の生活の質を保つために非常に重要です。
当院では、HPからのお問い合わせのほか、直接医師に話したいという方や、通院から訪問診療への移行を迷っている方向けに、外来でのご相談も承っております。お一人で抱え込まず、まずは一度ご相談ください。
訪問診療を検討すべき主な症状・状態
むくみは単なる体質ではなく、治療が必要な病気のサインである場合があります。特に、以下のような状態が見られる場合は、通院負担を減らし、自宅で適切な医療管理を受けることができる訪問診療の検討をおすすめします。
- 足のすねを指で押すと跡が残り、なかなか戻らない。
- 靴やスリッパがきつくて履けなくなった。
- 少し動いただけで息切れがし、横になると息苦しい(心不全の兆候)。
- お腹が張って苦しい、食欲が落ちている(腹水の可能性)。
- 尿の量が減ってきた、または色が濃い。
- がんの療養中で、手足の腫れや痛み(リンパ浮腫など)がある。
- 高齢で外出が困難になり、座りっぱなしや寝たきりの時間が増えた。
むくみに関連する状態と疾患リスト
| 状態の分類 | 具体的な症状・状態 | 関連疾患 |
| 心臓・循環器系の不調 | 動くと息切れがする、横になると息苦しい、急激な体重増加、下肢の強いむくみ。 | 慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理 |
| 腎臓機能の低下 | 尿量が減る、まぶたや顔の腫れ、全身の倦怠感、食欲不振。 | 慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、糖尿病(内服・インスリン管理) |
| 肝臓機能の低下 | お腹がカエルのお腹のように張る(腹水)、黄疸、足のむくみ。 | 肝硬変・腹水管理、肝臓・胆道がん |
| がん(緩和ケア・看取り) | リンパの流れが滞ることによる手足の腫れ(リンパ浮腫)、低栄養による全身のむくみ、腹水による圧迫感。 | 肺がん、胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など |
| 栄養状態・代謝の異常 | 食事が十分にとれず痩せているのにお腹や足だけむくむ(低アルブミン血症)、特定のホルモン異常。 | 胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、摂食障害(神経性やせ症・過食症) |
| 廃用・静脈還流不全 | 長期間の寝たきりや車椅子生活により、筋肉ポンプ作用が低下して起こる足のむくみ。 | 脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病、認知症(行動・心理症状ふくむ) |
| 精神疾患・その他 | 薬の副作用によるむくみや、自律神経の乱れに関連する身体症状としての不調。 | うつ病、統合失調症、不安障害/パニック障害、起立性調節障害(OD)、適応障害 |
訪問診療で対応可能な医療処置・管理
むくみの原因は多岐にわたり、心臓や腎臓、肝臓などの内臓疾患から、栄養状態、薬剤の影響まで様々です。訪問診療では、定期的な診察でむくみの原因を突き止め、原疾患のコントロールを行うとともに、苦痛を和らげるためのケアを提供します。
自宅で実施可能な基本的な診療・検査
- 全身状態の観察・診察:聴診による心音・呼吸音の確認、触診によるむくみの程度(圧痕の確認)や皮膚の状態観察、体重測定による水分貯留の評価を行います。
- 血液検査・尿検査:心臓への負担を示す数値(BNP等)、腎機能(クレアチニン、eGFR)、肝機能、栄養状態(アルブミン)、電解質バランスなどを定期的にチェックし、病状の変化を捉えます。
- 薬物療法と処方調整:利尿剤(尿を出しやすくする薬)の処方や調整を行い、体内の余分な水分を排出させます。また、むくみの原因となりうる薬剤の見直しも行います。
- 医療処置・ケア指導:必要に応じた点滴管理、腹水が溜まっている場合の苦痛緩和相談、弾性ストッキングの着用指導やスキンケアのアドバイスを行います。
在宅療養を始めるためのサポート体制
むくみの管理には、医療的なアプローチだけでなく、生活環境の調整も不可欠です。当クリニックでは、地域の病院と連携して緊急時のバックアップ体制を整えるとともに、ケアマネジャーや訪問看護師と密に連絡を取り合います。
特に、介護保険サービスの「居宅療養管理指導」を活用することで、医師や薬剤師がケアチームに対して専門的な助言を行うことができます。
例えば、訪問看護師によるリンパドレナージやフットケアの実施、ヘルパーによる減塩食の調理支援など、医療と介護が一体となって患者様の生活を支える体制を作ります。これにより、ご自宅でも安心して療養生活を継続することが可能になります。
早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)
むくみを「年のせい」と放置すると、心不全の悪化や歩行困難、皮膚トラブル(潰瘍や感染症)につながる恐れがあります。早期に訪問診療による介入を始めることで、以下のメリットが得られます。
1. 重症化と入院の予防
定期的に医師が訪問し、体重や自覚症状の変化を細かくモニタリングします。心不全や腎不全の増悪兆候を早期に発見し、内服薬の調整などを迅速に行うことで、緊急入院のリスクを減らすことができます。
2. 生活に即した具体的なケア
診察室では見えない自宅での生活環境(食事内容、水分の摂り方、睡眠環境など)を把握した上で、無理のない減塩指導や、足の上げ方、むくみを軽減する生活の工夫をアドバイスできます。
3. 通院負担の解消と精神的安定
足がむくんで歩きにくい中での通院は、患者様にとっても付き添うご家族にとっても大きな負担です。自宅で待つだけで診察を受けられるため、移動の苦痛がなくなり、リラックスした状態で治療に向き合うことができます。
ご相談方法と診療開始までの流れ
当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。
① 外来でご相談いただく場合の流れ
訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。
- 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
- 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
- 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。
② 訪問診療を希望する場合の流れ
通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。
- お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
- 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
- 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。
むくみ(浮腫)でお悩みなら、まずご相談ください
むくみは体が発しているSOSかもしれません。つらい症状を我慢せず、適切な医療サポートを受けることで、住み慣れた自宅で穏やかに過ごせる時間が守られます。
当院は患者様とご家族の不安に寄り添い、丁寧な診療で日々の生活を支えます。通院が大変だと感じたら、どうぞお早めにご相談ください。

