訪問診療対象の症状

声が出にくい・痰がからむ(喀痰ケア)

「痰が絡んで苦しそうだけれど、自宅でどう対応していいかわからない」「頻繁な吸引が必要で、通院のための外出が大きな負担になっている」このようなお悩みをお持ちの患者様、そして日々ケアに尽力されているご家族様、私たちにご相談ください。

呼吸状態の悪化や飲み込みの障害(嚥下障害)は、ご本人にとって大きな苦痛であるだけでなく、介護される方にとっても「窒息してしまうのではないか」という強い不安を伴うものです。

当クリニックでは、訪問診療を通じて、住み慣れたご自宅での呼吸管理や喀痰ケアをサポートしています。訪問診療のご相談は、HPからのお問い合わせの他、直接、医師に話したいという方や、通院負担の移行を迷っている方向けに外来でのご相談も承っております。

訪問診療を検討すべき主な症状・状態

声が出にくい、痰が切れずにゼロゼロと音がする(喘鳴)、食事のたびにむせ込んでしまうといった症状は、肺の機能低下や、飲み込む力の低下、あるいは神経の病気などが背景にあることが多くあります。

特に、自力で痰を排出する力(咳嗽力)が弱まっている場合、痰が気道に詰まることによる窒息や、誤嚥性肺炎を繰り返すリスクが高まります。また、頻回な吸引が必要な状態では、長時間の移動を伴う通院は患者様の体に大きな負担を強いることになります。

在宅での医療管理が必要となる具体的な疾患や状態を以下にまとめました。

状態の分類具体的な症状・状態関連疾患
がん(末期・緩和ケア)腫瘍による気道狭窄、呼吸困難、死前喘鳴(ゴロゴロ音)、全身衰弱による喀出困難肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓・胆道がん、乳がん、前立腺がん、婦人科系がん、血液のがん・脳腫瘍など
呼吸器疾患慢性的な息切れ、多量の痰、在宅酸素療法の管理が必要、感染に伴う急性増悪のリスク誤嚥性肺炎をくり返す、慢性呼吸不全/COPD(肺気腫)、気管支喘息(通院困難な方)
循環器・生活習慣病心機能低下による肺うっ血(息苦しさ・痰)、動くと息が切れる、全身の浮腫慢性心不全、心房細動など抗凝固療法の在宅管理、高血圧・脂質異常症の在宅管理、糖尿病(内服・インスリン管理)、慢性腎臓病(保存期の在宅管理)、肝硬変・腹水管理
脳神経疾患・難病嚥下機能障害(飲み込みにくい)、構音障害(ろれつが回らない)、筋力低下による呼吸不全、自力での痰の喀出不能脳卒中後遺症(片麻痺・嚥下障害など)、パーキンソン病/パーキンソン症候群、ALSなど神経難病
認知症・精神疾患食事の認知低下による誤嚥、服薬拒否による症状悪化、身体的苦痛の訴えが困難認知症(行動・心理症状ふくむ)、うつ病、統合失調症
医療的ケア・処置人工呼吸器の管理、気管切開部のケア、経管栄養による唾液・痰の増加リスク胃ろう・経管栄養の管理、中心静脈栄養(ポート/IVH)の管理、留置カテーテル・膀胱瘻の管理、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)のトラブルケア
小児・若年層のケアストレスや自律神経の影響による喉の違和感、発声困難、心身症としての症状起立性調節障害(OD)、不安障害/パニック障害、社交不安障害、うつ病(思春期・若年者)、適応障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、摂食障害(神経性やせ症・過食症)、チック障害/トゥレット症候群、ゲーム障害・インターネット依存(依存症)

訪問診療で対応可能な医療処置・管理

喀痰ケアや発声困難な状態に対して、ご自宅で安心してお過ごしいただくために、当院では症状に合わせた専門的な処置と管理を行います。

喀痰吸引・排痰ケアの指導と実施

自力で痰が出せない方に対し、吸引器を用いた鼻腔・口腔・気管内の吸引処置を行います。また、ご家族や介護スタッフが安全に吸引できるよう、具体的な手技の指導やアドバイスも実施します。体位変換(ポジショニング)による排痰促進(ドレナージ)の指導も行い、薬だけに頼らないケアを提供します。

薬物療法・ネブライザー(吸入)管理

痰の粘り気を取る去痰薬の調整や、気管支を広げて呼吸を楽にする薬の処方を行います。必要に応じてネブライザー(吸入器)を使用し、薬剤を直接気道に届けることで、痰を柔らかくし出しやすくする管理を行います。

誤嚥性肺炎の予防と治療

嚥下機能の低下が原因で痰や唾液が肺に入り込むことを防ぐため、食形態の調整や嚥下リハビリテーションのアドバイスを行います。万が一、肺炎の兆候(発熱、SPO2低下など)が見られた場合は、早期に抗生物質の点滴や内服治療を自宅で開始し、重症化を防ぎます。

在宅酸素療法(HOT)・人工呼吸器の管理

呼吸不全により酸素が必要な方には、在宅酸素濃縮器の手配と設定管理を行います。ALS等の神経難病で人工呼吸器(NPPVやTPPV)を使用されている方についても、機器の設定確認や回路のトラブル対応など、専門的な管理を行います。

自宅で実施可能な基本的な診療・検査

ご自宅では、診察(聴診・触診など)に加え、必要に応じて血液検査、尿検査、培養検査(痰や尿の菌を調べる)、心電図検査、パルスオキシメーターによる酸素飽和度の測定などが可能です。これらにより、全身状態を把握し、適切な治療方針を決定します。

在宅療養を始めるためのサポート体制

喀痰ケアが必要な患者様を支えるためには、医療機関だけでなく、介護や看護の多職種連携が不可欠です。当院では、地域の基幹病院と密に連携し、緊急時のバックアップ体制を整えています。

また、日々のケアにおいては、ケアマネジャーと連携してケアプランを調整し、訪問看護師と協働して、頻回な吸引や夜間の体位変換など、ご家族の負担を軽減する体制を構築します。

さらに、介護保険サービスの「居宅療養管理指導」を活用することで、医師や看護師が定期的にご自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行います。医療と介護が一体となって患者様を支えることで、安全で安楽な在宅生活を継続できるようサポートいたします。

早めの相談・検討が重要な理由(訪問診療のメリット)

1. 誤嚥性肺炎の予防と早期発見

「痰がからむ」状態を放置すると、気道が閉塞したり、細菌が繁殖して肺炎を引き起こしたりするリスクが高まります。定期的な訪問診療により、呼吸音の変化や痰の性状(色や粘り気)を医師が継続的に観察することで、肺炎の兆候を早期に発見できます。早めの処置を行うことで、救急搬送や長期入院といった事態を未然に防ぎ、住み慣れた場所での生活を守ることにつながります。

2. 呼吸苦の緩和による生活の質(QOL)向上

適切な排痰ケアや薬物療法、酸素療法を行うことで、「息が苦しい」「夜眠れない」といった症状が緩和されます。呼吸が楽になることは、睡眠の質を改善し、食欲の回復や会話を楽しむ余裕を生み出します。ご本人が苦痛なく穏やかに過ごせる時間は、ご家族にとっても大きな安心となり、家族全体の生活の質の向上に寄与します。

3. ご家族の介護負担と不安の軽減

痰の吸引や呼吸管理は、ご家族にとって精神的・肉体的に大きな負担となります。「やり方が合っているのか不安」「夜中に何かあったらどうしよう」という悩みに対し、医師や看護師が専門的な視点からアドバイスを行い、24時間の連絡体制で支えます。通院介助の手間がなくなるだけでなく、いつでも相談できる専門家がいる環境は、在宅療養を続ける上での大きな支えとなります。

ご相談方法と診療開始までの流れ

当院は、墨田区、江東区、台東区、中央区、荒川区、江戸川区、千代田区を中心に訪問診療を提供しております。その他のエリアについても、患者様の状況やご希望に応じて対応可能な場合もございますので、個別にご相談ください。

① 外来でご相談いただく場合の流れ

訪問診療に迷っている方や、症状の相談をご希望の方は外来受診をご利用ください。

  • 予約・受付: 電話またはWebで予約後、受付で症状と保険証を確認します。
  • 診察・相談: 医師が症状について問診・診察を行います。
  • 今後の治療方針検討: 診察結果に基づき、外来継続か訪問診療への移行かを患者様・ご家族と検討します。

② 訪問診療を希望する場合の流れ

通院困難な方、終末期で在宅緩和ケアを希望される方は訪問診療をご検討ください。

  • お問い合わせ(HPフォーム/電話): 現在の症状についてご相談ください。
  • 事前面談(情報共有・病状確認): 訪問診療の適応確認と病状を詳しく伺うための面談(初回訪問)を行います。
  • 診療開始: 診療計画を立案後、定期的な医師の訪問診療を開始します。

詳しい流れはこちらのページへ

声が出にくい・痰がからむ(喀痰ケア)でお悩みなら、まずご相談ください

「声が出しづらい」「痰が絡んで苦しい」という症状は、ご本人にとって非常につらいものです。また、それを支えるご家族にとっても、日々の吸引やケアは決して楽なものではありません。私たちは、そのような不安や負担を少しでも和らげ、ご自宅で穏やかな時間を過ごせるよう全力でサポートいたします。

通院が難しいと感じたら、決して無理をせず、まずは私たちにご相談ください。あなたの「家にいたい」という想いに寄り添い、最適な医療をお届けします。

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